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2016年11月10日 (木)

サティを映画に使うと

映画を作る学生には「エリック・サティの音楽は使うな」と言う。あの甘ったるい音楽が流れたとたんに、陳腐になるから。ところが今月27日公開の行定勲監督『ジムノペディに乱れる』は、それを全編に使っている。そしておもしろい。

日活ロマンポルノリブートの1本だが、そもそも映画の題名の「ジムノペディ」はもちろんサティの曲名。そして映画が始まると優雅にその曲を弾く女性が現れる。ところがそれは消えて、隣の家のセクシーな女性が胸をはだけて誘惑してくる。

売れない映画監督の1週間を描いた映画だが、いかにもいかにもロマンポルノという場面がてんこ盛り。監督は教えている専門学校の女子生徒と出くわすと、そのまま彼女の家についてゆき、関係を結ぶ。ところがそこには彼氏が現れて、慌てて逃げる。

監督する映画の撮影を途中で投げ出した若い女優と偶然会うと、憎いはずなのに道端の小屋でコトに及ぶ。そこにおしっこをかける酔っ払い。自分の作品の特集上映に遅れていくと、そこに愛人たちが来ていて、ののしりあいになり、監督は逃げる。

離婚した妻は自分に金を貸すために、嫌な男と寝る。その変態的行為(これはかなりおかしい)をこっそり見る監督。病院で昏睡状態の二度目の妻の前で、看護婦と関係を持ち、医者に見つかる。

こうして書くといかにもワンパターンだが、これをユーモアたっぷりに描く。同時に監督を演じる板谷創路にはある種のリアリティもある。クリシェを並べながら、ユーモアとリアリズムの微妙なバランスで最後まで楽しませる、巧みな構成と演出だと思った。

見終わってみると、かつてのロマンポルノに比べても際どいシーンはなかった気もする。女性の裸で見えるのは胸だけ。ネットでいくらでもハードなシーンが見られる現在、あくまで知的遊戯としてエロスを見せようとした点も賢い。

見終わって「おもしろかった」と宣伝の方に言ったら、「トランプが勝ちましたよ」と言われた。何ということだ。ありえないことが起こってしまった。これからはもう何でもありだろう。まさに、終わりの始まり。

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コメント

トランプびっくりしました。ただ、世界がなんか動いている気はします。イギリスのEU離脱も唐突だったし。北朝鮮、中東だけでなく、既存の考え方では理解ができないことが世界中で起こっているような気がします。
ここで、既存の考え縛られないことに関連して、僕は長男が小さいときに、右手を右、右脚を左、左手を左、左足を右と教えてみた。左右という概念の破壊。で、右手あげてといえば右手、右脚あげてといえば左足をあげるようになった。
そのうち飽きて、ほったらかしにしてたけど、長男が小学校高学年になった頃、長男が次男に右どっちだっけ?と聞いているのをみて、あっ、僕がやったことが、と思った。でも、すぐに忘れた。
長男が高校生くらいになったときに、ふと思い出して、おまえ、右左わかる?と聞いてみた。そしたら、自分は、右左がなかなかわからなかった。で、右手にほくろがあり、そっちが右なので、右左がわからないときには手をみて、ほくろで右左を判断したと。
こうやって、子供は育つのだな、と思った。
ただ、既成の概念の破壊については、全く意味がなく、単にいじめだったような気もする。

投稿: jun | 2016年11月10日 (木) 22時53分

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