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2016年11月18日 (金)

『湾生回家』に泣く

日系人もそうだが、海外に住んだ日本人の話が好きだ。だから始まったばかりの『湾生回家』という台湾のドキュメンタリーを劇場に見に行った。「湾生」とは日本の植民地時代の台湾で生まれ育った約20万人の日本人を指すという。

映画は台湾で生まれ、敗戦と同時に日本に帰って日本で生きた人々を描く。だいたい70代後半から80代半ば。小さい頃に花蓮や台北に住んでおり、もう何度も出かけている人ばかり。

彼らが幼馴染に会ったり、学校を訪ねたりする時の台湾の人々の優しさは、不思議なくらい。「マサル」と名前まで覚えていたりする。あるいは「去年亡くなった」と聞いて、「遅かった」と涙する日本人。

ある女性などは、病気の時に台湾に行ったら治ってしまったという。それ以来、定期的に長期滞在をする。この映画でおもしろいのは、その子供たちも出てくることで、その女性の息子は、そんなに何度も台湾に行く母親は騙されているのかと思ったが、一度ついて行って歓待されて驚く。実際にその息子が台湾の人々とどんちゃん騒ぎをする映像もある。

あるいは別の女性は、敗戦後日本に帰る日が来た時に、自分だけ犬と猫と猿と一緒に台湾に残ろうかと真剣に考えたという。「我々がかくまうから大丈夫」と言ってくれた台湾の人々も多かったらしい。

しかし、一番感動的なのは、日本人として台湾の家族に養子縁組させられた日本人、片山清子の物語。自分を捨てた母の墓を探そうと岡山に行く。その後、本人は車椅子生活になり、会話もろくろくできなくなるが、子供や孫が探し求める。

とうとう映画プロデューサーから見つかったと写真が送られてきた瞬間といったら。鼻に管をつけた老婆が、スマホで拡大された写真を見て涙する。そしてその夫と娘と孫娘は、岡山に行って墓参りをする。そして岡山市役所で戸籍を確認し、清子がちゃんと戸籍に残っていることを見つける。

それから清子の母親が以前に住んだ大阪の土地に行き、駐車場になった場所の周囲で当時を知る人を探し出す。そしてその結果を清子に見せる。

クライマックスは、台北で開かれる「湾生出生戸籍謄本」の授与式。台湾政府が日本人の戸籍を保存していたことも驚きだが、こうした会まで開いてくれるとは何と優しいのだろう。

いろいろな意味で、知らない世界に触れた思い。ある湾生の娘が述べた「日本のこと嫌いじゃないアジアの国があるんですね」という言葉が心に残っている。監督はホァン・ミンチェン(黄銘正)という若い台湾人だが、撮影に10年近くかけた時間が生きている。

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コメント

情報をありがとうございます。今夜行ってきました。いい映画でした。

投稿: KAZUKO | 2016年11月18日 (金) 23時35分

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