突然、夏から冬へ
急に雪が降って、冬になった。その前の週までは昼間に20度になる日もあり、夏のようだった。特にフランスでは夏でも朝15度、昼25度くらいが普通だったので、9月末に帰国してからまた夏に戻った気がしていた。そしてフランスの夏くらいの気候が2ヵ月ほど続いた。
つまりフランス式に言えば、日本は6月から11月まで夏になってしまう。これでは亜熱帯地域だろう。昔は、こんなに暑くなかった。
覚えているのは、31年前に内定をもらった西武百貨店で10月1日から3日までの研修という名の内定者拘束があった時のこと。その時に西武の人事部の1名はお洒落な分厚いツイードのジャケットを着ていて、やはり西武はカッコいいなと思った記憶がある。
10月1日は「衣替え」だったはず。今は実質的には11月末になってしまった。ようやく夏のシャツやジャケットをクリーニングに出して、冬用のコートを着始めた。
九州の出身だし、昔はTシャツだけで出られる夏の方が好きだった。ところが今はコートやブーツを身につけることのできる冬の方が気持ちがいい。たぶん年をとると、痩せて貧相な体が夏は気になるからだろう。少し高級なコートを着ていると、なんとなく自信が出てくるからあら不思議。
そして分厚いマフラーを巻き、お洒落な手袋をして、外国製の革のブーツを履くと、ほら、「渋い紳士」になる(気がする)。要は、自信のない自分を無意識のうちに防御しているのか。
最近の冬のお気に入りは、イッセイ・ミヤケの新素材の長く軽い茶色のコート。今は冬のコートも短めが普通なのでちょっと時代遅れな感じがあるが、勝手に「流行を超えるイッセイ」と解釈して着ている。まわりはどう思っているかはわからないが。
コートは流行はあまり関係がないが、一番困るのはジャケットとズボンの形。実は新聞社時代のジャケットやズボンを毎年少しずつ捨てている。肩がアルマーニ風に張っていて、ズボンにはタックがあって幅が広いから、およそ今風ではない。10年から20年着たものだからいいか。
今さらながら、ファッションとは何かと思う。昔買ったロラン・バルトの『モードの体系』をめくると、「モードにおける新しいものとは、予想できぬものでありながらしかも体系的で、規則的でありながらしかも未知で、射幸的でありながらしかも体系的なものである」と書く。これほどに微妙なものなら、私の手には負えない。
それでも、冬のお洒落は大好きだ。
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