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2016年11月 3日 (木)

乗り気のしない東京国際映画祭:その(5)

昨日2本見て、コンペ16本をすべて見終わった。もちろんこれは始めてだが、全部見るとこの映画祭のコンペの狙っているところがわかる気がした。今日の午後2時から授賞式なので、その前に自分がいいと思った作品を中心に振り返っておきたい。

「星取表」では★を1つから4つまで付けた。つまり「これはやられた」とか「傑作」という1本には出会えなかったことになる。星4つは既にここに書いたフィリピン映画『ダイ・ビューティフル』とルーマニア映画『フィクサー』。『ダイ・ビューティフル』は巧みな構成に驚いたが、あくまで娯楽映画を超えていない。その分、劇場公開は可能だろう。

『フィクサー』は、アドリアン・シタルという監督で、前作がベルリンで話題になりパリでも公開されていた。この作品はブカレストのフランス系通信社で記者見習いをする青年を主人公に、フランスに売られた少女の事件を扱う。記者たちを前にした15歳の少女の語りが何ともリアル。

青年自身がフランス人に使われる身分というのも、旧東側の国らしい。そのうえ、彼は年上女性と結婚してその連れ子との関係にも悩む。主人公以外がいささか類型的かもしれないが、語りのうまさに引き込まれた。

星3つは7本、星2つは5本、星1つは2本。星3つだが、3.5点あたりにしたかったのは、スウェーデン映画の『サーミ・ブラッド』とフランス映画『パリ、ピガール広場』とイラン映画『誕生のゆくえ』あたり。

『サーミ・ブラッド』は、サーミ族というスウェーデンの少数民族に生まれた女性が、若い頃を振り返る話。少女時代に受けた差別が彼女の視点から淡々と語られる。監督自身がその出身というが、顔に定規を当てられているシーンなど何ともリアル。冒頭と終盤に老婆に戻るが、この部分が弱く、少女時代との結びつきがうまくない。最初の長編というから、これからが楽しみ。

『パリ。ピガール広場』もラッパーの2人組の初監督作品。ピガール広場でバーを経営するアラブ系兄弟を描いたものだが、いかがわしい夜のパリの濃厚な雰囲気が匂ってくる。連続テロ事件の根っこにあるものさえ感じさせる空気感は見事だが、ドラマが弱い。

『誕生のゆくえ』はアスガー・ファルハディを思わせる語りのうまさで、見るものを引き込んでゆく。2人目の子供を産むかどうかで悩む若い夫婦の話だが、終盤にもうひとひねり欲しかったと思う。

そんなこんなでそれなりに楽しんだが、もしここにカンヌで見たアルモドバルやベネチアで見たラヴ・ディアスの映画あったら、星8つとか9つになってしまう。やはり彼我の差は大きい。

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