九州弁の話:その(2)
九州弁の話を書いたら、福岡の大学時代の友人2人からコメントが来た。1人は福岡南部でほぼ同郷だが、もう1人は佐賀出身なので方言はかなり違っていた。おもしろくなってきたので、もう少し書きたい。
九州弁だと思っていたのに、意外に全国で使われていたと知って驚いた言葉がいくつかある。例えば「わや」。これは福岡南部では使うが、博多ではあまり聞かなかった。「もう、わやばい」といったら、「もう終わりだ」「こりゃ、無茶苦茶だ」など、混乱の極みを意味する。
ところがある時、大阪で「そんなしてしもうたら、わややで」という言葉を聞いて驚いた。この混乱の感じは南の感じがすると思ったが、ネットで調べてみると、北海道や東北でも使うらしい。ところが東京ではほとんど聞かない。
「わや」は辞書で調べると、「わうわく」が転じたもので「狂惑」「枉惑」などを当てる。古語辞典には室町時代の用例が載っていたが、「うそ、でたらめを言って人をたぶらかすこと」と書かれている。この狂った感じは、少なくとも今の東京にはふさわしくないかもしれない。
古語が地方に残っていることは、よくある。覚えているのは、「おらぶ」。これは「叫ぶ」を意味する。私の母は今でも「なんばおらびよらすやか」と言う。「何を叫んでいるのだろうか」という意味だが、この「おらぶ」は万葉集に出ているとは、高校の授業で習った。また古語辞典を見たら、「天仰ぎ、叫びおらび」と万葉集の例があった。
「がめる」も九州弁だと思っていたら、これはほぼ全国区だった。「盗む」「人のものをこっそり自分のものにする」ような意味だが、これは「わや」以上に、下品というかせこい感じがある。私の感触だと関西の人がよく使う気がしていたが、ネットで見たら北海道や東北でも使うらしい。これも東京では使わないと思う。
さてこれは関西でよく使う「がめつい」と関係があるのか、福岡でよく使う「がめ煮」=福岡以外では「筑前煮」と関係があるのか。国語辞典や古語辞典も見たが、わからない。
ちなみに私の育った家では「がめ煮」と言わず、「ぐだき」=たぶん「具炊き」と呼んだ。だから福岡で「がめ煮」と聞いた時に、その下品な感じにびっくりした。さてこれが福岡南部=筑後全体の言い方かはわからない。例によって熊本出身の母が持ち込んだのかもしれない。
九州弁について考えていると、何となく気持ちが暖かくなってくる。この冬はこれで行こう。
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コメント
佐賀でも使われていた「おらぶ」が古語のなごりとは知らなかった。私も古文の授業で習ったのだろうが全く覚えていない。
「がめる」は久留米に住むようになって初めて知った。その意味から「がめ煮」に少々違和感を覚えるのは納得する。「わや」も初めて知ったのは久留米時代に北九州出身の友人が使っていたから。方言は、人の交流から広がっていくように思う。そこがいい。
佐賀出身の私は、博多弁よりも筑後弁、熊本弁、長崎弁の方に親しみを感じるし方言も近い気がする。有明海のような内海は、かつては交流のルートだったことを感じる。
投稿: 久保 | 2016年11月26日 (土) 22時52分