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2016年11月 8日 (火)

ヨーロッパのグローバル化を日本で考える

朝日新聞に月に一度日曜日に挟み込まれる「GLOBE]という別刷りで、「グローバル化という「巨象」」という特集があった。普通この類の経済関係は読まないが、思わず読んだのはイタリアのことが細かく書かれていたから。

まず、2001年のジェノヴァ・サミットの時に反グローバル運動のデモをして、混乱の中で警察に撃たれて殺された23歳のカルロ・ジュリアーニの話があった。実はこの事件はドキュメンタリー映画「少年、カルロ・ジュリアーニ」になって、翌年のカンヌで上映された。

デモを撮影していた映像を集めて、彼が警察に殺されたことを見せると同時に、母親を中心としたインタビューが感動的だった。2003年の「イタリア映画祭」で私はそれを見せようとしたが、当時のイタリア文化会館の館長に反対されて上映できなかったのを覚えている。

彼の死から15年、グローバル化はひどくなった。「失業が増え、賃金が下がり、ごく一部が富む。息子たちの警告は現実になった」と犠牲者の父親が語っている。

半年パリにいた時、奇妙な現象を感じていた。パリは昔に比べてずっと暮らしやすくなったのに、貧困層は確実に増えているというもの。スーパーは朝8時からノンストップで夜9時まで開いていたり、月単位めの地下鉄・バスの定期券は、郊外まで含むようになったり、美術展はネット予約すれば並ばずに入れたり。

欧州内は格安飛行機が大流行で、パリとプラハやローマ間が往復1万円前後。イタリアでは旧国鉄駅にチケットの自動販売機が2種類あって、旧国鉄と民間のどちらかを選ぶことができた。パリやローマなどの大都市では、ウーバーという配車サービスを使えば、タクシーより安くて便利だった。

ところがパリの地下鉄での犯罪は増え、街角の物乞いの数は何倍も増えた。かつてのパリ大学の同級生はみんな結婚して立派に稼いでいたが、その子供たちの多くは仕事がない。

「GLOBE」に戻ると、ローマとトリノで女性市長が生まれていた。新党「5つ星運動」の市長たちだとは聞いていたが、それがEU懐疑派の保守政党とは知らなかった。10年ほど前にトリノに旅行した時、何と気持ちのいい街だと思った。ところが今、市内に廃業した工場跡が300カ所以上あるという。

私がトリノで歩いたのは、「歴史地区」と呼ばれる富裕層が住むあたりだったと、その記事でわかった。「5つ星運動」が弱かった場所らしい。そこには工場跡はなかった。私は何も現実を見ていなかった。

考えてみたら、女性首長が保守なのはパリ市も東京都も同じ。つまり、格差社会では、なぜか保守派の女性首長が求められる。彼女たちはおおむね反グローバル。左派のオヤジはもはや信用されない。アメリカの大統領選では男女逆だが、ヒラリーは左派オヤジ的か。便利・格差社会で、奇妙なねじれの時代になった。

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