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2016年11月29日 (火)

多くを見ていた東京フィルメックス:その(3)

いつの間にかフィルメックスも終わり賞も発表されたので、いくつかの映画について触れておきたい。最優秀作品の中国の『よみがえりの樹』は既にここに書いたが、私には「スペシャル・メンション」と「観客賞」を撮った韓国の『私たち』の方がストレートに訴えかけてきた。

『私たち』はユン・ガウンという女性監督の長編第1作だが、小学校の女生徒たちが主人公。仲間外れにされがちなソンは、転校生のジアと仲良くなるが、ジアは次第に離れてゆくというたわいない内容だが、これが何ともリアル。

ソンは父親がアル中で母も働くが、ジアは裕福で母はロンドンにいるという。家庭環境の違いが子供の友達関係に影を落とす。いじめっ子たちがソンに言う「くさい」という言葉の強さに、私は昔を思い出して震えた。

親たちは子供の心がよく理解できないし、先生に至っては勘違いだらけ。まさに「大人はわかってくれない」だが、本当に小学校の先生でなくて良かったと思った。この強烈な作品は、既に劇場公開が決まっているというから楽しみ。私としては★★★★。

偶然にイスラエル映画を2本見たが、なぜか共通のテーマを扱っていた。コンペのヤエレ・カヤム監督の初長編『オリーブの山』と、イスラエル特集のエラン・コリリン監督の『山のかなたに』と、まずどちらも題名に「山」がある。内容もイスラエル人の家族がうまくいかず、アラブ人との係わりのなかで、変わってゆくというもの。

『オリーブの山』はユダヤ人墓地の中の家に住む主婦が、夫との不和にもんもんとするというもの。夜、墓場で行われる売春を助けたり、墓掘りのアラブ人の男に行為を抱いたり。最後にとんでもないラストが控えている。全体がいささか単調で★★。

『山のかなたに』は『迷子の警察音楽隊』の監督だけあって、もっとドラマチック。父親は軍隊を退職して人生に悩み、高校で教える母親は、教え子の誘惑に身を任せる。娘はアラブ人の青年と仲良くなり、事件に発展する。つらい内容なのに、全体が軽快なテンポで進む。★★★。

唯一見た邦画は庭月野議啓監督の初長編『仁行の受難』は相当の珍品で★。これ以上は語りたくない。

全体としては、東京国際映画祭と同じくらいのレベル。どちらも若手中心だし、同じ東京で1月後にもう1つ国際映画祭がある意味は、あるのかどうか。エドワード・ヤン監督の『牯嶺街少年殺人事件』があちらで、『タイペイ・ストーリー』がこちらとなると、いよいよわからない。外から見ると、作品を取り合ってお互いの価値を下げあっているようにしか見えない。

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