『東京どこに住む?』に考える
東京のどこに住むのか。地方出身者は上京以来いつも考える。これが人によって違う。速水健朗の『東京どこに住む?』は、そのあたりをわかりやすく書いている。副題は「住所格差と人生格差」。いかにもキャッチ―だ。
一言で言うと、東京の西側の郊外は収入が高い。スカイツリーなど東側は低い。ただし、皇居を中心に5キロ範囲で考えると意外に東側が便利で、人口が移りつつあるというもの。もう1つの傾向は中央部の人口が増えていること。
これは別に言われなくてもわかる。しかしこの本は細部がおもしろい。例えば中央線をめぐっては、吉祥寺などが人気の一方で、「「中央線がなんか苦手」という意見が、なぜか女性からあがってきた」「圧倒的に独身世帯が多いのが中央線沿線である」。
「地方出身者が、学生時代に中央線沿線のアパート暮らしを始め、そのまま大人になり、結婚し子供が生まれても、そのまま中央線沿線に住みついてしまったというケースが、中央線沿線住民には多い」。筆者はこれを「中央線中華思想」と名付ける。
あの中野や吉祥寺あたりの感じは私も苦手だった。何だか自分たちの世界で充足している感じで、特に大学を出てから上京した自分はこの中には入れないと思った。
かといって、東横線とか京王線も好きになれなかった。住む人々の満足げな顔が、資本主義に騙されて消費文化を満喫して喜んでいるようで、中央線よりもさらに嫌だと思った。
たぶんそれは自分が東京に来てすぐは大学院生で、金も希望もない生活をしていたから、ひがんだだけかもしれない。その時私は、家賃が安く個性の少ない西武線沿線に住んだ。
またノスタルジアになったので本に戻ると、都心に人口が増えたのは政策によるというのが興味深い。1997年に高層地区誘導地区が定められ、タワーマンションが立てやすくなった。2002年に「工場等制限法」が廃止されて、大学などの都心回帰が可能になった。
個人的には、タワマンは中央線や東横線よりももっと嫌だ。建物そのものより、あれを好きな人が信じられない。いつか地震でバタバタ倒れる気がするし。
そんな私は、神楽坂に近い個性のないマンションに住んでいる。この本の大手不動産7社が昨年実施した「マンション購入希望者に聞く、住んでみたい街アンケート」では、20番目。そのくらいでいい。
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