大学の教師は何を着ればいいのか:その(2)
ファッションのキモは靴である。と誰が言ったかしらないが、何となくそういう気がする。一見目立たないようで、意外に目につくポイントになるから。そのうえ、いい靴は高いから、金がないと隠れたお洒落はできない。
私が買ったなかで一番高かったのは、フランスの「ベルルッティ」というブランド。鮮やかで微妙な光り具合の革靴が有名だ。色も茶や黒から、青、赤、グリーンなどたくさんある。
2001年に、「日本におけるイタリア年」というのがあった。今も続く「イタリア映画祭」はこの時に私が立ち上げたものだが、ほとんどはその年限りのイベント。1999年頃からいくつかの企画の準備を始めて、やたらにイタリアに出張した。そしてイタリア人に会うと、彼らが女も男もみないい靴を履いているのに驚いた。
99年の春に、フィレンツェのフェラガモの本店で黒い靴を買った。フェラガモ企画の「ヘップバーン展」を翌年日本に巡回するためだったので、安くしてもらって3万円ほどだったか。それをきっかけに、イタリアやフランスの靴を買うようになった。
ベルルッティはたぶん2001年頃に明るい茶色を1足東京で買ったが、8万円弱だった。そして1年後ほどに黒を買った。こちらは10万円を少し越した。しかし、2、3年後に茶色の方の修理を巡って青山の本店で喧嘩して以来、買う気がなくなった。
要は修理に1万円以上かかると言われたから。実際、地元の靴修理屋では2千円ほどで済んだし。最近、新宿の伊勢丹でこのブランドの店を見たら、今風の革のスニーカーなどに手を出していてびっくりした。
記者になってからは、お洒落だけではなく、動きやすい靴でないと困る。そのあたりから、イタリアの「トッズ」とかスペインの「カンペール」とかのカジュアルなブランドに乗り換えた。こうなると、値段も下がった。今も基本的にはこの方向を続けている。
最近のお気に入りは「コール・ハーン」というアメリカのブランド。この2年ほどで買った3つのブーツは、偶然すべてそこのものだった。ある程度の高級感とお洒落感がありながら、実に履きやすいうえ、バーゲンで安くなる。アメリカではどういう人が履くのだろうか。パリでは見なかった気がする。
困るのは、あまり履かなかった靴。10年ほどみっちり履いてかかとを何度か取り換えると、だいたいダメになる。ところがいろいろな理由であまり履かなかった靴は健在で、置き場所に困る。服と違って流行はないし、何万円もした靴はなかなか捨て難い。
今でも時々そういう靴をあえて履くことがあるが、そんな時は妙に過去の記憶が蘇ってノスタルジアの気分になる。退職したら、毎日10年以上前の靴を履こうと思っている。
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