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2016年12月 3日 (土)

誰も見ない映画が好きだった

思い出すと、1990年代前半から10年ほどは、忙し過ぎてあまり映画は見ていなかった。そのくせ、誰も見ないような映画を見に行った。つまり、フィルムセンターとかアテネフランセとか東京日仏学院に出かけて、映画好きしか知らないような映画を見ていた。今も時々その衝動に駆られる。

最近見たので記憶にあるのは、フィルムセンターの「UCLA映画テレビアーカイブ 復元映画コレクション」で見た『ザ・コネクション』(1961)。これは昔パリのシネマテークで上映された時に「伝説的映画」と「リベラシオン紙」で書かれていたが、見逃していた。

監督は当時アメリカの実験映画をリードしていたシャーリー・クラーク。ヤク中毒のミュージシャンたちが売人が来るのを待っている様子を撮った映画だが、おもしろいのは監督が出てくること。というより、監督がカメラマンに指示を出して撮影している様子が写る。

カメラマンは写らないが、声はいつも聞こえるし、マイクや照明も見える。すべては部屋の中だが、多くのショットが長回しで演劇的にえんえんと続く。1961年と言えばシネマ・ヴェリテの金字塔『ある夏の記憶』が撮られた年だが、こちらの方がメタ映画的には先を行っている。

もう一つすごいのは、麻薬の話やゲイの話が中心になること。これが1961年のアメリカと考えるとすごい。カサヴェテスは『アメリカの影』(59)をもう撮っていたが、これほどヤバイ話題は出てこない。後半になると監督までヘロインをやりだすのだから。

監督がいつも出ている映画といえば、東京日仏学院で見た「ディアゴナル」特集のポール・ヴェキアリ監督の『劣等生』では、監督が主演。今年のカンヌで見損ねたが、フランソワーズ・ルブラン、フランソワーズ・アルヌール、エディット・スコブ、カトリーヌ・ドヌーヴらの豪華女優陣が出てくる。

アルヌールさんからこの映画については聞いていたので、見たかった。話はある老人をかつての妻や恋人たちが訪ねて来るというもの。2007年から2015年までの話だが、途中からこれは回想だとわかる。

それにしても、今年86歳の監督が自分が主演でこれまでの愛人たちと再会する話を作るとは、何と幸福なエゴイズムだろう。映画としてどうこうというより、不思議な味わいに満ちていた。特に「昔はカンカンを踊った」などと話すアルヌールさんが魅力的に撮られていた。カンカンとはもちろんルノワールの『フレンチ・カンカン』のこと。

「誰も見ない」と書いたが、それぞれ100人ほどの観客はいた。やはりこんな映画が好きな人はいつの時代にもいる。

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