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2016年12月20日 (火)

ロウ・イエの描く盲人の愛

ごくまれに、目の不自由な人々を主人公に描く映画がある。日本だと清水宏監督『按摩と女』(1938)が有名だが、これには石井克人監督の2008年のリメイク『山のあなた』もある。最近だと『イマジン』(2012)という、ポーランドの監督がポルトガルで撮った秀作を去年見た。

『イマジン』は療養所を描いているが、『按摩と女』は題名通り按摩師=マッサージ師たちを描く。1月14日公開の中国のロウ・イエ監督『ブラインド・マッサージ』も同じように、目が不自由でマッサージをする人々のドラマだ。

『按摩と女』のマッサージ師は全員男で、温泉のいくつかの宿に出かけて働き、そのうちの1人が東京から来た女に恋をするという話をコミカルに描く。ところが『ブラインド・マッサージ』は若い男女が働く南京のマッサージ院が舞台で、彼らの間のドロドロの恋愛がテーマ。

ロウ・イエ監督は、都会で生きる若者の息が詰まるような恋愛群像を描くことにかけては天才的だ。今回はそれが目の見えない人々を描いているのだから、さらにどぎつく強烈になる。見る前からそんな気がしていたが、実際に暗澹たる映画だった。

10人ほどのマッサージ師の中に起きるいくつもの痛ましい恋愛を描く。シャー院長は美人のドゥ・ホンを好きになるが、相手にされない。ドゥ・ホンはシャオマーに好意を持っているようだが、彼は恋人同士でやってきたワンとコンの愛し合う姿を見て、コンを好きになる。

シャオマーは気分転換に同僚に風俗店に誘われて、そこに勤めるマンと相思相愛になるが、コンへの思いも残っている。ワンはもともと駆け落ち同然でコンと南京に来たが、弟が借金に追われて結婚する金もなくなり、やくざに追われる。

一番痛ましいのはシャオマーだろう。風俗店でマンが別の客を相手にしているのを見て襲いかかり、殺傷沙汰に発展する。画面はシャオマーの絶望的な思いを表すように激しく揺れ、アップになり、反転し、ぼやける。そしてシャオマーとマンは行方不明になる。

時おり流れる優しい音楽が何とも切ない。愛とセックスと暴力が視界を閉ざされた世界で激しく展開し、視覚と聴覚を直撃する。見終わると、眩暈のような感覚が網膜に残ってしばらく続いた。

あえて言えば、後半は同じ調子の画面が続くだけに、115分は少し長いか。

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