卒論の話:その(3)
私の大学の授業はだいたい今週までで終わる。次は4月10日からと言うと「また休みですか。いいですねえ」とよく言われる。ところが大学の教師にとって、とりあえず3月半ばまではむしろ繁忙期。
まず学期末の試験問題を作り、採点をする。200人もいて記述式だと、採点は数日かかる。試験監督をさせられる時もある。そして入試が2回。これは監督をしたり、論文を採点したり、面接をしたりと朝早くから夜までかかる。
今は、学期末の課題のレポート読みと卒業論文読みに忙しい。3年生の理論系の課題が1万字で、卒論は4万字以上。3年生はゼミ誌に載せるので、細かくチェックして書き直しを命じる。
卒論は公開の審査があるので、そこで述べるコメントを準備する。かつては公開でなくて小さな部屋で2、3人の教員が学生にいろいろ述べていたが、それだと何となくイジメのようになる場合も。強く批判されて学生が泣き出すこともあった。
公開にすると、「君はこの4年間不真面目だったじゃないか」といった卒論と関係のない発言はしにくくなる。あくまで卒論に絞って言うべきことを言っておしまい。ほかの同級生も下級生も見ているので、他人が聞いても参考になるような意見を言うよう心がける。
それにしてもこんな日々を送っていると、自分はそれほど偉いのかと思う。一応新聞社にいたから文章レベルの直しは得意だが、もちろん映画のすべてを知っている訳ではない。
例えば『スター・ウォーズ』についての論文が出た時に、私が言えることは限られている。それでも論文としての体裁や論理の構築や方法論を論じることはできるけれど。
今後はこちらは老いてゆく一方なので、あまり威張らないようにしないといけない。先生という職業はやはり危ない。
無茶苦茶な卒論を書いた学生でも、現在立派な社会人となってまわりの評価の高い教え子もいる。だから批判されても気にしないように、というのはこれを読んでいるかもしれない4年生への助言である。
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