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2017年1月13日 (金)

「日本におけるキュビズム」のインパクト

埼玉県立近代美術館で1月29日まで開催されている「日本におけるキュビズム―ピカソ・インパクト」展を見に行った。北浦和まで行ったのは、鳥取県立博物館の尾崎信一郎さんから年末に招待券が送られてきたから。

尾崎さんは、最初に勤めた政府系機関の時、つまり30年ほど前、互いに20代後半で仕事をして一緒に欧州に行った(この話は長くなるので後日)。今回の展覧会は彼が副館長を務める博物館で昨秋に始まり、埼玉の後は高知県立美術館に巡回する。

巡回する展覧会は中心になる美術館から始まる場合が多いから、これは尾崎さんの企画だと思って見たかった。20世紀半ば過ぎまでの西洋と日本の前衛美術の関係については第一人者だから。カタログを見ると、彼は巻頭論文を書いていて、納得。

そうでなくても、最近「やがて悲しき」日本の近代美術が気になっていたので、ちょうどよかった。この展覧会は1910年代から20年代のキュビスムが日本に与えた影響と、1950年代の日本でピカソがいかに浸透したかを探る二本立ての構成。前半はキュビスムの影響がむしろ一時的だったことを見せ、後半はジャンルを横断した運動だったことを見せるのが趣旨らしい。

私は前半を見て目が回った。1910年代前半からこんなにもキュビズムが日本で知られていたとは。新聞や雑誌で紹介され、いくつかの作品は買われて日本に持ち込まれる。とりわけ第一次大戦後は、無数の画家たちがパリに滞在している。ほとんど名前が知らない画家ばかりだった。

もちろん東郷青児や萬鐵五郎なら私でも知っている。ところが萬はパリに行っていないし、東郷は行く前からピカソやブラック風の作品を発表している。あるいは柳瀬正夢や古賀春江も知っているが、柳瀬はむしろ表現主義、古賀は未来派の影響が強いかと思っていたが、ここに並ぶと明らかにキュビスムを感じる。彼らも渡欧経験はない。

要はジャーナリズムや美術界でパリのキュビスムが話題になって、みんなが真似をした感じ。ところが渡欧する者が増えるに従って、不思議とその熱は冷めてゆく。行ってみたらキュビスム以外もいろいろあった、というところか。それにしても知らない画家が何十人といる。

作品は東京国立美術館所蔵の萬の傑作《もたれて立つ人》を始めとして、全国の国公私立美術館から選りすぐり、という感じ。国内所蔵のピカソやブラックもある。とにかく手間のかかった展覧会で、見ていてその情熱が伝わってくる。カタログも同様。あまり中身に触れなかったので、これは後日もう一度書きたい。必見。

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