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2017年2月25日 (土)

イタリアで「鋼鉄ジーグ」とは

5月に公開されるイタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』を見た。ガブリエーレ・マイネッティという監督の初長編で去年のイタリア映画祭で上映されたものだが、パリにいたので見ていなかった。映画祭前日のプレミア上映にも選ばれていたので、気になっていた。

見てみると、いろいろな意味で興味深かった。まずこのヘンな題名は原題通り。「鋼鉄ジーグ」はわかる人にはわかるが、私も含めて知らない人間にはチンピンカンプン。これは永井豪のアニメシリーズで、テレビ朝日で1975年から76年にかけて夕方6時から放映されていたという。

私は中学生で、もうアニメは見なかった。このアニメは欧州各国でも放映されて、時にイタリアでは大ヒットしたという。1976年生まれの監督は、80年代に見ていたのだろう。

この映画がおもしろいのは、現代のイタリアで20歳前後の若い女性がこのアニメに夢中であること。いつもDVDプレイヤーで『鋼鉄ジーグ』を見ており、主人公のエンツォに訪れる事件をアニメとごっちゃにしてしまう。

テロと暴力のはびこるローマが舞台。その日暮らしのエンツォは、ある時に災難でテベレ川に落ちる。そこで放射性廃棄物のドラムに体がハマったことから、ある時異常な怪力が身についたことに気づく。

エンツォはその怪力を利用してATMを引っ張って現金を盗んだり、現金輸送車を素手で襲ったり。知り合いのゴロツキは死んでしまうが、その娘アレッシアと出会い、彼女は怪力のエンツォを「鋼鉄ジーグ」の司馬ヒロシと同一視する。

麻薬取引をするジンガロは、エンツォと同じ力が欲しくなって、川に飛び込んで怪力を手に入れる。彼が目指すのはサッカー場の爆破だ。エンツォはそれを阻止しようと走り始める。

ゴロツキのエンツォが「鋼鉄ジーグ」と呼ばれて、テロと麻薬と不況で混乱したローマを救うヒーローになるという設定がおもしろい。70年代の日本のアニメのヒーローが現代のローマを救うのだから。この映画はイタリア映画では年間5位の興行成績を上げて、イタリアのアカデミー賞(ドナテッロ賞)で主演男優賞を含む7部門を受賞したという。

映画としては、さほど洗練された演出ではない。ある種のジャンル映画のようなB級感覚がいっぱいだ。この映画がイタリアでヒットしたのみならず、映画人たちの高い評価も得たということは、現代のイタリア人がこうした怪力の正義の味方を求めているということか。

閉塞した現代ヨーロッパの若者像と日本のアニメの知られざる影響力を考えるうえで、一見の価値がある。考えてみたら、水中の放射性廃棄物が巨大なパワーを生み出すというのは、日本で生まれた『ゴジラ』をも思わせるし。

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