私に人生相談とは
最近、人生相談をされることが増えた。私のように「数奇な運命」をたどった変人に相談をするとは何かの間違いだが、実際によくある。一番多いのは、教え子の卒業生が「仕事をやめたい」というもの。
普通の大学の教員と違って、会社員を20年以上やっているから人生経験豊富と思われるのだろう。ところが私が会社員でやっていたことは相当に特殊なので、一般には当てはまらない。
それでも、頼まれたら会う。多くの場合は、家族にも職場の上司にも友人にも話しにくいことを誰かに話したいだけなので。「仕事をやめたい」という場合は、「どんなに向いていなくても3年間は勤めた方がいい」と言う。「半年でやめた」という経歴は、その後を考えるとトクではないから。それに3年働けば、何かは身につく。
それから以前の職場の後輩から「転職したい」という相談もよく受ける。私は「収入はあまり気にしない方がいい」と言うことにしている。私自身、給料が少なかった最初の職場の時に、「お金がないから不幸だ」と思ったことは一度もなかった。
最近あるのが、大学の博士課程を終えた若い友人からの相談。つまり、博士号を取ったが仕事がないがどうすべきかというもので、これは答えようがない。もちろん道は2つしかない。専門とあまり関係のない場所に就職するか、石に噛りついても大学の専任教員を目指すか。
就職となると、予備校の英語などの教師が多い。あとは出版社が多いが、語学を生かして専門商社にいる人もいる。私の知り合いで、かつてある程度名の知られた映画評論家で、現在はビルの管理人をしている方もいる。
文系で大学の専任を目指すには、非常勤講師を何とか数コマ探して、あとは著述や翻訳で食いつなぐしかない。優秀な研究者でも専任が見つかるのは30代後半というのはザラだから、過酷な世界である。自業自得ではあるが、そもそも、文科省は博士課程の定員を増やし過ぎたと思う。
毎年、教え子が巣立ってゆく。私に相談しても本当は無駄だが、話を聞いてあげるくらいなら大歓迎だ。そのかわりに、いつの間にか私の自慢話を聞かされるかもしれないが。
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