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2017年2月15日 (水)

『アンチポルノ』はいけない

年間250本くらいの映画をスクリーンで見ているが、試写で見た映画は正面からは批判しにくい。公開前でもあるし。その点、劇場でお金を払った映画には、好きなだけ文句を言える。

園子温の『アンチ・ポルノ』は劇場で見たので、自由に書きたい。私にとっては最初から最後までピンと来なかった。正直、びっくりした。

映画は、小説家兼アーチストとして時代の寵児になった京子(冨手麻妙)を描く。彼女のマネージャーの典子(筒井真理子)や取材に来る雑誌編集長やカメラマン。ピアノを弾く妹や再婚した両親。

園子温の書下ろしの脚本というが、彼のひとりよがりな部分がそのまま出ている。まずアート志向。冒頭から黄色に塗られた広い部屋で踊る半裸の女にゴージャスなクラシックがかかる。妹の弾くピアノ。

この監督の映画では、よく誰でも知っているクラシック音楽が盛り上がりの時に使われる。それがパロディやキッチュではなく、あくまで真面目に使っているからいつも恥ずかしいと思っていたが、今回はそのテンコ盛り。

そのアート志向は、赤や白の大きな布に落書きをした「作品」の上に若い女性が座ったり、自宅の天井に裂け目が入ったりと意味なく続く。最後は部屋中に絵具を散らして「アート」を見せるが、どうも今一つ。

映画自体が途中から「映画を撮る映画」に変わってゆく。いかにも頭の悪そうな監督やスタッフが何度も出てきて、馬鹿なセリフを何度も吐く。京子に「監督も死ね、映画も死ね」と言わせるけど。このメタ映画ぶりは、見ていて不愉快になった。

一番不愉快なのは、京子の吐くセリフ。どうも日本の女性は自由がないことを言いたいらしいが、「売女」」(ばいた)というセリフを何回も使う。この使い方がどうしても不愉快にしか思えない。日本における女性の立場や表現の自由を哲学的に言いたいようだが、これはとにかくうるさい。

そのうえ、テレビで安保法案反対のデモのシーンを流すわざとらしさ。確か冒頭にも国会の映像が出ていたが。政治を語るのに、こんな軽い扱いとは。

美学、メタ映画、哲学、政治と「主張」が続き、女性の裸は出てくるがエロチックな場面はない。ロマンポルノの約束を破ったうえに、壮大な妄想に近い説教をされた気分になった。

この監督は、『冷たい熱帯魚』や『地獄でなぜ悪い』のような、ワルノリの馬鹿馬鹿しい映画が好きだ。『ひそひそ星』もそうだが、真面目に作ったものは私は苦手だ。

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