『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の苦悩
アカデミー賞の時期は、ノミネート作品の試写は混雑する。『ラ・ラ・ランド』は1時間近く前に行かないと入れなかったらしい。ケネス・ロナーガン監督・脚本の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』は5月13日の公開だが、先日主演男優賞と脚本賞を受賞したばかりなので、一番最初の試写から満員だった。
25分ほど前に着いた私は、危うく補助席になるところだった。最近は、試写会が混む映画はヒットする。これも好きな人は好きだろうなと思った。
こう書くのは、どちらかと言えば苦手なタイプの映画だったから。物語は、主演男優賞を得たケイシー・アフレック演じるリーが突然の兄の死を知って故郷に帰る話だが、ドラマは冒頭に起こってしまい後は過去の記憶を追いながら現在に耐えるリーが描かれる。
リーはボストンでアパートの便利屋として働き、一人で住む無口な男だが、ときおり怒りを爆発させる。ある時電話がかかってきて、電車で1時間半ほどにある故郷に住む兄ジョーが亡くなったことを知る。それから兄との日々が蘇る。
故郷はマンチェスター・バイ・ザ・シーという海辺の小さな街で、映画の題名にしたくなるほどいい感じ。住民は少ないが古い建物が多く、かもめが舞う。そこを複雑な思いを抱えた寡黙なリーが、ジャンパーを着て寒そうに歩く。
リーはジョーの遺書により息子のパトリックの後見人となる。リーはパトリックをボストンに連れて行こうとするが、パトリックは反対する。ふたりの確執が始まる。
リーは自分の思いをはっきり言わず、いつも考え込む。見ていると、意地悪なわけではなく深い思いに沈んでいることがわかってくる。彼が兄やパトリックと過ごした時間、彼が結婚してから起きた不幸なできごとなど、故郷にもはあまりにも多くも記憶が染みついていた。
映画は静かに街を歩く彼の姿を、記憶の映像を随所に交えながら見せてゆく。そこに「アルビノーニのアダージョ」を始めとして、クラシックやボブ・ディランなどがたっぷりと流れる。リーの思いは、突然暴力となって現れる。
137分は、思ったことをすぐ言ってしまう私のような人間には少し長く感じたが、これは見る人次第だろう。出てくる女性たちが、結局はまともな男性たちに比べてみんな問題ありだったのも気になった。
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