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2017年3月 1日 (水)

村上春樹の新作は:その(1)

先週の24日(金)に友人がフェイスブックで「今日は村上春樹の新作の発売と『ラ・ラ・ランド』の公開で心が躍る」と書いていた。村上の『騎士団長殺し』は発売前に重版を決め、第1部70万部、第2部60万部を刷ったという。一方、『ラ・ラ・ランド』は最初の土日が興収4億円超。

『ラ・ラ・ランド』はこのままだと興収20億円は軽く超えそうなので、ざっと200万人は見ることになる。村上の新作は今後どう伸びるかわからないが、のべで200万人は読むだろう。単価は本は各税抜き1800円なので、本が高いけれど。どちらも30億円くらいの大商い。

『ラ・ラ・ランド』は去年ベネチアで見たが、楽しい映画であるのは間違いない。同じ監督の『セッション』よりも個人的には好きだが、実は中盤は退屈した。演出の巧みさが前に出過ぎているような気もしたので、どこか気になる。

『騎士団長殺し』は、発売日に神戸からの帰りに新大阪駅で買って、新幹線で読み始めた。彼の小説のいいところは、どんどん読めることにある。だから疲れた時にはちょうどいい気分転換になると思った。

ところが、今回はなかなかそうは行かなかった。まず奇想天外なドラマがない。主人公が妻と別れたばかりで、出会った女性と成り行きで寝るのはいつものパターンだが、この小説では最初に結末が書かれている。

「その当時、私と妻は結婚関係をいったん解消しており、正式な離婚届に署名捺印もしたのだが、そのあといろいろあって、結局もう一度結婚生活をやり直すことになった」

「その二度の結婚生活(言うなれば前期と後期)のあいだには、九ヶ月あまりの歳月が、まるで切り立った地峡に掘られた運河のように、ぽっかりと深く口を開けている」

だからこの小説は元の鞘に収まる結末がわかったうえで、9か月の「そのあといろいろ」を読みことになる。ところが、ここに大した事件が起こらない。簡単に言うと、主人公の妄想のようなものしかない。時代や社会の影も極めて薄い。

つまり村上春樹はあえてサスペンスやドラマを自ら封じて、個人の妄想のような思考の深みを狙ったと言えるかもしれない。最近には珍しく、主人公には名前がない。かつての「僕」ではなく「私」だが、大半が彼の視点から描かれる。さて、これからの展開については次回書く。

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