春の快楽
ようやく、春になった。コートやマフラーやブーツなしで外に出かけることが、こんなに楽しいとは思わなかった。去年はこの時期にパリだったので、まだまだ寒かった。パリで本当にコートがいらなくなるのは、5月のカンヌの後ではなかったか。
「春眠暁を覚えず」という言葉がある通り、まず朝までぐっすりと眠れる。もう少しすると暑くて目が覚めるが、今はふとんがちょうどいい。外には、何とも柔らかい日差しが見える。
時計を見ながら、「あっ、5時か、もう少し」などと考える快楽。もともと早寝早起きだが、日の出が早いと早く起きる。つまり、窓の外の光によって目が覚める。最近はなぜか、途中でトイレに起きることが少なくなった。
これは嘘のようだが、実は時おりアパート5階の窓に、桜の花びらが舞うことがある。現在住んでいるアパートが20年前にできた時、中庭に10本ほどの桜が植えられた。それがだんだん太くなり、かなり美しい桜が咲くようになった。今は半分青葉が出てきて、まさに桜吹雪状態。
アパートの階段は、桜でびっしり埋まる。だから今の時期はエレベーターを使わずに、階段を歩く。中庭の桜は管理人さんが掃除しているが、さすがに階段の桜まではしない。だから踏んでも踏んでも古い桜の上に新しい桜が散ってくる。
いわゆる花見はいいけれど、混んでいる。近くには江戸川橋公園や飯田橋から市ヶ谷にかけての外堀の名所があるが、とにかく人が多い。ところがアパートの階段には私しかいない。みんなエレベーターを使うし。
大学の教師になって、4月は特別の月になった。今までいた4年生がまるでブルドーザーで押し出されるように一挙にいなくなって、これまで会ったこともない新入生が何百人もぞろりと揃う。
私の教える学科だけでも、170人ほど。私は学科1年生の必修科目を担当しているが、最初の授業で毎年ながら驚く。全員が本当にまじめに聞いている。今年は違う、と思いたいが、たぶんこれは続かない。残念だけど、遅れる学生、寝る学生、話す学生が少しずつ増えてくる。
そんなこんなで4月半ばは私にとって、最も気持ちのいい季節。これからたぶん1週間ほどでアパートの桜が完全に消えてしまうだろうが。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 飛行機のトラブル(2026.09.07)
- 美術と映画をめぐって(2026.08.26)
- 本を売る(2026.08.20)
- 人生の僥倖(2026.08.09)
- いつの間にかイタリア映画の専門家に(2026.08.07)


コメント
今日の文章を読んで、岩井俊二監督の「四月物語」を見たくなりました。日本の4月の空気をこれほどリリカルに見せてくれる映画はなかなかありません。泣ける映画じゃないのに、なぜか見るたびに泣けてしまいます。
投稿: 石飛徳樹 | 2017年4月16日 (日) 13時47分