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2017年4月10日 (月)

『トトとふたりの姉』の強さ

4月29日公開のドキュメンタリー映画『トトとふたりの姉』を見た。ルーマニアのアレクサンダー・ナナウという監督の映画で、ブカレスト郊外の貧民地区を描いたもの。今世紀になってルーマニア映画は勢いがあるので、見たくなった。

10歳のトトは、2人の姉と暮らしている。17歳のアナは美人だが、誘惑に弱く、14歳のアンドレアは気が強い。3人は小さなオンボロアパートに住んでいるが、夜になると叔父やその友達がやってきて、ドラッグを始める。母親は麻薬取引で刑務所の中。父親は顔も知らない。

そんな八方ふさがりの中で、3人は何とか生きてゆこうとする。いくつもの印象に残る強いシーンが出てくる。ボロアパートで叔父が作ってくれた手製のコンロで湯を沸かす姉弟。彼らが刑務所の母に会いに行った時、トトは母を見るなり泣き出して抱きつく。

アナは調理師になろうとするが、学校に相談に行くと親の許可がいると却下されて、「人生は嫌なことばかりね」と呟く。トトとアンドレアはヒップホップ・ダンスを始めるが、始めはリズムさえ取れなかったトトが、どんどんうまくなり、試合に出ることに。

トトとアンドレアは家を出て施設に移る。アナも連れてゆくが、馴染めない。アンドレアはカメラで撮影することを施設で覚えて、自宅に戻った姉を撮影する。雪の中で遊ぶトトとアンドレア。彼らは雪の日に退所する母を迎えに行くが、帰りの電車の中で姉弟が施設にいると聞いて母は怒る。

少しうまくいくと、またつらいことが現れる。一歩進んで二歩下がるような毎日だけど、少なくともトトとアンドレアの中では何かが進んでいるのを感じる。

彼らはいわゆるジプシー(ロマ)で、彼らの住む地区の学校も施設にいる子供たちもみなそうだ。唯一、普通の白人が出てくるのはアナが調理師の学校にブカレスト市内に行く時や、トトがダンスの試合に出る時。映画の大半を占めるロマの人々には、貧困とドラッグが結びつき、悪循環を繰り返しているようだ。

そういえば、パリにもあちこちに彼らが野宿していたし、地下鉄で彼らに財布を盗まれそうになった友人もいた。もはや世界の貧困はどこも似通ってきた。その中にするりと入り込み、信頼を得た者だけが撮りえた優しい映像がここにある。

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