『笑う101歳×2』に考える
101歳が2人出てくる映画のドキュメンタリー映画を見た。6月3日公開の『笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ』で、冒頭に2人が舞台に出てくるシーンが写される。
映画はこの2人の現在とこれまでを交互に写す。見る前はこの2人の関係を描いたものかと思っていたが、冒頭を除くと2人が並ぶことはない。年齢以外の共通点をあえて挙げれば、反権力といいうことか。
どちらも伝説的な人だが、私は名前だけでよく知らなかったのでいい機会だった。むのは戦前は報知や朝日新聞に勤めていたが、1945年8月15日に朝日を退社して、3年後に故郷の秋田に戻る。そこで週刊新聞「たいまつ」を作って30年出し続ける。
斎藤隆夫という名物議員が1940年に「反軍演説」をして除名になるが、むのは彼のその後の発言を朝日に載せる。おもしろいのはその演説が音声として残っていることで、100歳のむのはそれを聞きながら解説する。
「たいまつ」の中身についてはあまり触れない。むしろ彼が100歳を超えてインタビューに答えたり、早稲田大学に行って学生の質問に答えたりするさまを写す。歯がなくて口をむしゃむしゃさせるが、語る中身は明瞭で戦争の時の新聞社でみなが議論を避けていた様子などを話す。
笹本は、さらに若く見える。来ている服もいつもお洒落。日本初の女性報道写真家だった彼女の場合は、撮った写真がすべてを語る。とりわけ画家の三岸節子、俳人の鈴木真砂女、歌人の斎藤史、料理研究家の阿部なおなど、働く女性を撮った写真は力強い。
むのは入院し、食事もろくろく取れなくなる。そして自宅に帰ってさらに衰弱する。息子が「もしもし」「目を開けて」と必死で話しかける。一方笹本は元気なままで、マンションの高い階から緑の多い窓の外を眺める。どちらにしても2人とも全くボケとは無縁なのがすごい。
むのの亡くなった夫人がまだ元気な頃に夫を語る場面と、笹本が別れた夫について語る場面があって、一番いい。見終わると、人間の老いについて、そして日本の現代史について、考えている自分に気づく。
あえて不満を言えば、監督の河邑厚徳が元NHKディレクターのせいか、ナレーションも音楽も説明的でわかりやす過ぎる。個人的にはどちらももっと少ない方がよかった。
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