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2017年4月23日 (日)

田中眞紀子『父と私』に失望

実は、私は田中角栄についての本が好きだ。政治学者や新聞記者が書いた本も、愛人たちやその子供が書いた本さえ読んでいる。大嫌いな石原慎太郎の本だけは読んでいないが。だから娘の田中眞紀子の本も楽しみにして読んだ。

田中眞紀子は、政治的信条や行動を別にすれば、発言は抜群におもしろかった。自民党に縛られない自由な物言いが楽しかったので、彼女が語る角栄は期待していた。

ところが、これが全くおもしろくない。題名の通り『父と私』で、カリスマだった父親を全面的に美化するファザコン娘そのもので、「私だけが知る角栄の偉大さ」の場面が続く。

角栄が彼女にかけた言葉がキーワードになる。「時を大事にしなさい。時間は二度と戻ってはこないからね」とか「お前には中を見せてあげよう、それがお父ちゃんの夢だ」とか。

実際に彼女は高校生の時にフィラデルフィアの私立学校に留学し、父が渡米してロックフェラー家に招かれた時に同行する。この本にはその時にタクシーで住所を言って相手にされなかったエピソードがあるが、微笑ましいというよりは、単なる自慢話でしかない。彼女は、宮中晩餐会なども自慢げに細かく書いている。

「私は幼い頃からせっかちな父が何を求め、何を知りたがっているのかすぐに勘が働いた。それを簡潔に述べる術も心得ていた。父と私は気が短いからこんなところは似た者同士。”阿吽の呼吸”である。日頃も母や叔母たちがグダグダと似たような回りくどい表現で会話を繰り返していると、せっかちな私は、
「これだから女は嫌なのよね!」
と言ってしまい、彼女たちから、
「女で悪うございましたね。マコちゃんはいったいなんなの?男かしら」

たぶん、この会話がすべてを表している。自分だけが偉大な父を理解できるという確信。そして今の安倍政権を非難する。常に父を比較に出しながら。一番驚いたのは彼女の黒塗りの公用車がママチャリと衝突した時の話で、彼女はハイヒールの母親を非難している。

本当は角栄に取り入った政治家やジャーナリストの話を読みたかったが、これらはすべてぼかして書かれている。愛人の話はもちろん一言もない。

久しぶりに「買ってはいけない」本だった。少しは評価していた田中眞紀子が、実はどんな人間かわかったのはよかったが。

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