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2017年4月18日 (火)

「絵巻マニア列伝」のオタクたち

サントリー美術館で5月14日まで開催の「絵巻マニア列伝」は、実は普通の展覧会と少し違う。題名の通り、数多くの絵巻が展示されているが、それを収集したコレクター別に展示しているところが新しい。副題は「うい、らぶ、えまき」。

つまり、各章は「後白河院」とか「花園院」とかに分かれるうえ、それぞれの日記なども展示されて、実際に見た様子なども知ることができる。後白河院=後白河法皇と言えば、平清盛や源頼朝を手玉に取ったとんでもない皇室という印象が強い。院政と言えば、この人を指す感じ。そのうえ、出家までしている生臭坊主だし。

一方で『梁塵秘抄』を編纂した文化人ということは知っていたが、「蓮華王院」の宝蔵に和漢の典籍や数多くの絵巻物を収集していたとは知らなかった。今では宮内庁や東京国立博物館を始めとして各地の所蔵となっている展示品には、国宝(知恩院の《法然上人絵巻》)や重要文化財がごっそり。

絵巻は右から左に進む。つまり左に行くと次の場面になっている。不思議なのはその場面同士が微妙につながっていることで、漫画のようなコマごとの区切りがない。そのゆるい場面転換を楽しみながら、後白河法皇やその子孫たちが、漫画を読むように楽しんだのではないかと思うとおかしい。

絵のタッチも、漫画のようにおおむねユーモラスで誇張も多い。サントリー美術館が最近購入したという《病草紙断簡 不眠の女》は、眠れない女を描く。眠っている女たちを見ながら、1人で起きている女の様子は何ともおかしい。

絵巻マニアは、後白河院父子や15世紀の後崇光院・御花園院父子のような皇族ばかりではない。足利家の代々の将軍がそうだし、江戸時代の八代目将軍・松平定信もそうらしい。

たぶん絵巻物を集めてこっそり見るという行為は、今ならオタクだろう。もちろん豊かな階級にしか許されない娯楽だが、友達を集めて見せたりしていたのではないか。絵巻をスルスルと転がしながら、少人数で声を挙げながら見ていた様子を想像してしまう。家族や友人間で絵巻を貸し出したりもしていたことを示す文書も展示されている。

アニメ『かぐや姫の物語』の高畑勲監督は、『十二世紀のアニメーション~国宝絵巻物に見る映画的・アニメ的なるもの』という本で、絵巻を映画の技法から説明している。手元に本がないので自信がないが、左へ物語が進むさまをカメラの前進移動に例えていた。ある部分がくっきり大きく描かれているのはクロース・アップとか。

歴代の絵巻マニアと今のアニメファンが重なって見えてきた。

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