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2017年4月 7日 (金)

雪村に驚く

やはり、美術史はつくづく知らないことが多いと思った。東京芸大美術館で5月21日まで開催中の「雪村 奇想の誕生」展を見てのこと。チラシには「「ゆきむら」ではなく「せっそん」です」と大きく書かれているが、私の知識もそのレベル。

字づらから「雪舟」を思い浮かべるが、時代は雪舟が15世紀後半に活躍して16世紀初頭に亡くなった頃に雪村が生まれている。水墨画が多いので似ているようだが、よく見るとヘンな絵が混じっている。「奇想の誕生」と銘打たれているが、確かに江戸時代の若冲や蕭白を思わせるような、「ありえなさ」が見いだせる。

その意味では、先日ここに書いた明治の河鍋暁斎にも繋がっているかもしれない。一番有名なのは、たぶん《呂洞賓図》。呂洞賓は八仙の1人と言われる仙人で、おそらく川を泳ぐ龍の頭の上に乗り、空に飛ぶ龍を睨む。仙人の首はカクっと折れるくらい垂直に曲がり、手に持った壺からは小さな龍が飛び立って、天の龍と戦う。

足の下の龍も仙人も大きなぎょろりとした目。仙人の伸びた髭も龍に向かって戦いを挑むよう。全体が狂気に満ちたダイナミズムをはらむ。実はこの展覧会には同じ題名の作品が3点あって、首が直角に曲がって一番狂っているのは、前期(4月23日まで)展示の大和文華館所蔵の重要文化財。首の向きが逆のもう1点は全期間展示で、さらにもう1点後期展示作品もある。

作品はアメリカからも数点出ていて、ミネアポリス美術館蔵の《花鳥図屏風》などは、六曲一双で見ごたえがある。老いた梅の樹に白鷺が休んでいるが、その視線に先には2匹の不気味なギョロ目の鯉がいる。鯉はまるで白鷺に飛びかかろうとしているかのよう。

こうやって見ていると、一見典雅な水墨画の細部に、アニミズム的な妄想が見えてくる。水墨画はもちろん中国から来たものだし禅と結びついているが、そのなかにこうした「奇想」もあるとは知らなかった。

やはり日本美術の奥は深い。半分ほどは後期に作品が変わるので、もう一度行きたい。

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