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2017年5月14日 (日)

19世紀パリから、20世紀ニューヨークへ

ずっと昔の外国の街を歩いたような気分になれる展覧会を、2つ見た。練馬区立美術館で6月4日までの「19世紀パリ時間旅行」展と文化村ザ・ミュージアムで6月25日まで開かれている「写真家 ソール・ライター展」。

「19世紀パリ時間旅行」は「失われた街を求めて」の副題で、鹿島茂氏所蔵の版画を中心に、19世紀前半から20世紀初頭までのパリを描いた作品を集めたもの。町田市立版画美術館や新潟県立近代美術館など全国各地の美術館からの出品も多く、ぜんぶで300点を超す労作。

ノートル・ダムやシテ島、ルーヴル、チュエルリーなどの中心部から、パリがだんだんと広がっている様子がよくわかる。18世紀からの地図も多数展示してあったが、私は去年自分が住んだ13区のRue des Tanneriesをひたすら探した。この通りが出てきた地図は、1850年のものだったと思う。パリが全部で12区だった頃の一番端っこにあった。

それからナポレオン三世とオスマン男爵の大改革で、今のパリの20区になるのが1860年から。するとその前の「いしにえのパリ」のノスタルジックな版画が膨大に作られる。驚くのは、1870年頃から今のパリと街並みがあまり変わらないこと。19世紀半ばの江戸を撮ったベアトのパノラマ写真を東京都写真美術館で見たが、すべて低層の瓦と茅葺屋根で今の東京と違い過ぎた。

時おり、アンリ・ルソーやルノワールなどの油絵もある。終わりのあたりで、東京国立近代美術館の佐伯祐三作《ガス灯と広告》(1927)が出て来た時にはびっくりした。

文化村の「ソール・ライター展」では、ニューヨークの街並みよりも、そこに住む普通の人々やポーズを取ったモデルたちの姿をじっくり見ることができる。ファッション誌用の写真も街中の撮影が多く、ニューヨークに流れる独特の濃い雰囲気を感じる。雨やガラスの向こうの人々がいい。

やはりおもしろいのは、後半のカラーの写真と水彩画。ボナールやヴュイヤール、そして日本美術が好きだったことが伺えるような、静けさと倦怠が伝わってくる装飾的なイメージだ。彼は1981年に引退したが、カラー写真の存在が知られたのは90年代になってからという。実は数年前に彼についてのドキュメンタリー映画が公開されるまでは、私もその存在を知らなかった。今回が日本で初めての個展という。

実を言うと、もう1つ展覧会を見ていた。国立西洋美術館で5月28日まで開催の「シャセリオー展」だが、これについて語るのは難しい。一言で言うと、そのロマン主義の世界に入れなかった。初めての個展で貴重な機会なのだが。

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