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2017年5月27日 (土)

私からは遠い展覧会3つ

自分にとって遠い世界だと思った展覧会を3つ見た。1つは東京ステーション・ギャラリーで6月18日まで開催の「アドルフ・ヴェルフリ」展。このスイスの画家はいわゆる「アウトサイダーアート」=「アール・ブリュット」の画家として知られるが、まとめて見たのは初めて。

アウトサイダーアートは、精神を病んだ人々のみならず、独学で美術を学んだ者たちの際立った表現を指す。ヴェルフリに関して言えば、いわゆる不幸な環境に育ち、性犯罪を繰り返して31歳で精神病院に入れられている。そしてそこで35歳で自発的に絵を描き始める。

展示された作品を見てまず驚くのは、すべて鉛筆と色鉛筆でザラ紙に描かれていること。クレジットを見ると、ザラ紙は新聞用紙。そこには奇妙な人々や町や動物が描かれて、そのすき間に楽譜や文字や数字がびっしりと埋まっている。いわゆる油絵も水彩画もない。

題名の多くに、日本を含む各国や都市の名前がはいっている。それぞれに異なる宇宙がありそうな精密画の世界だが、いかんせん何のことかわからない。大量に書かれた文字や数字や楽譜を見ると、かなり具体的な訴えかけがありそうだ。チラシによれば、世界征服を目指していたらしい。

最近「朝日」で草間彌生の連続インタビューを読んでいると、彼女もまた精神的な苦痛を解消するために絵を描いてきたことがよくわかる。しかしヴェルフリに関して言えば、本当に自分の誇大妄想をそのまま絵にしていて、「美術」としての作品を作ろうとはしていない感じ。

時代も1904年から27年までで、草間とは違う。あえて言えばアンリ・ルソーや『セラフィーヌの庭』という映画にもなったセラフィーヌ・ルイの時代だけれど、彼らと比べてもヴェルフェリの描く世界は桁外れで美術に収まらない。個人的にはあまりに遠い世界で、長くは見ていられなかった。

全く別の意味で遠い世界だと思ったのは、目白の学習院大学資料館の「宮廷装束の世界」(今日まで!)。明治天皇が夏に来ていた濃い黄色の装束や皇族の白い産着、北白川宮が成人式の時に着た装束、彼との結婚式(1935年)の時に妃殿下が着た華やかな装束。

成年式や結婚式に際して配られる「ボンボニエール」と呼ばれる記念品の展示もあった。中には金平糖が入っていたらしい。さすがに学習院ならではの展示だが、学内には緑も多く古い建物もあって、散歩にもいい。

前にもちらりと書いたが、国立西洋美術館で明日までの「シャセリーオー展」もまた遠かった。19世紀半ばの、抒情と物語性たっぷりな神話の世界や中東の風景や肖像画。1856年に37歳で亡くなっているが、あと20年も生きていたら印象派とぶつかってどうなっていただろうか。そんなことを考えた。

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