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2017年5月 6日 (土)

『日本ヘラルド映画の仕事』に考える

映画史の本は多いが、映画産業史は少ない。古典中の古典、田中純一郎著『日本映画発達史』全5冊は、辛うじて産業的側面に触れているが、この本も1970年代まで。

だからそれ以降の映画産業史は空白に近い。網羅的とは言えないミニシアター関連の本が少しと、邦画大手の社史くらい。特に生まれては消えた多くの配給会社については、どこにも書かれていない。

私が学生時代を過ごした1980年代に一番カッコよかった配給会社と言えば、ヘラルド、つまり日本ヘラルド映画だろう。1980年の『地獄の黙示録』から、『Uボート』(82)、『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)、『ニキータ』(91)などの話題作を次々と公開し、大島渚の『戦場のメリークリスマス』(83)や黒澤明の『乱』(85)のような日本人監督の合作も手掛けていた。

フランス映画社やユーロスペースのようなミニシアター系よりも大きな規模で、しかし作家性の強い作品を打ち出していた。今だとギャガに一番近いか(というと怒る人がいそうだが)。

この会社の本が出ないものかと思っていたら、谷川健司著、原正人監修で『日本ヘラルド映画の仕事 伝説の宣伝術と宣材デザイン』という本が出たのですぐ買って、GW中にようやく読んだ。

2013年に出た斉藤守彦著『映画宣伝ミラクルワールド』 は、「東和ヘラルド松竹富士 独立系配給会社黄金時代」という 副題通り、3社の宣伝合戦を面白おかしく書いたもので、「歴史」にはなっていない。今回の本はその点一社に絞っただけあって、ずいぶん詳しい。

すばらしいのは主な作品のポスターの画像がカラーで見られること。見ていると、時代の雰囲気が蘇るようだ。その分、文章が少ないのが残念。そのうえ「コメディ&ファミリー物」「西部劇・戦争映画」「ホラー&スプラッター」などジャンル別に書かれているため、「歴史」が見えにくい。

こちらの勝手な希望としては、せめて時代順にすべての配給作品名を記した年表が欲しかった。当たった映画や話題になった映画の当事者の自慢話が多いが、誰がいつからいつまで宣伝部長なのかといった歴史的な事実が見えない。

それでも、この本を見ているとヘラルドの日本の映画界で果たした役割の大きさを実感する。ぜひ「シネセゾン」についても作って欲しい。

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