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2017年5月21日 (日)

「「バベルの塔」展」に考える

7月2日まで東京都美術館で開催の「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展」を見た。展示の方法が実におもしろくて絵画の世界を堪能したが、同時にそれでいいのかとも思った。

もちろん、ブリューゲルはフェルメールなどと同じく真筆が少ないので、代表作の《バベルの塔》が来るのはありがたい。さらにもっと少ないボス(20点ほど)も有名な作品2点《聖クリストフォロス》と《放浪者(行商人)》もあるのだから貴重というほかはない。

今回の展示は、この3点に焦点を当てている。ボスの2点は、横に3、4つずつ拡大した写真を置き、細部に解説文がある。《バベルの塔》に至っては、フロアーの入口の壁に絵画の一部が拡大されている。「塔」を取り巻く道を登るような気分になる。

左側には実物があったが、近くで見るのは列を作る必要があったので、少し離れたところから見た。それから後ろを見ると3倍ほどに拡大した複製があった。これだとかなり細部まで見える。

右奥にはシアターがあり、終わったところで人が流れていったので、「本物」の列が少なくなったところに並んだ。5分ほどで見られたが、常時「前に進んでください」「歩きながら見てください」の声に押されて落ち着いて見られなかった。「本物」の輝きはあったような、なかったような。

それからシアターを見たが、これには驚いた。絵画をCGに取り込んで立体的に見せ、さらに滑車や小さく描かれた労働者たちが動きだしたのには驚いた。「おお」という小さな声も上がった。塔の建設の様子やそこで働く人々や住む人々の様子が手に取るようにわかる。

展覧会で解説映像を見せるシアターを作るのは、今では普通になった。絵画を拡大して、細部を解説する。しかし絵画展で絵をCGに取り込んで絵に描かれた機械や人物を動かして見せたのは、例がないのではないか。ミイラ展や恐竜展ならよくあるが。

確かによくわかる。今の時代の展覧会には必要なのかもしれない。今回は3点とも縦横1メートルもない小品なので、こうしないとわかりにくい。しかしこんなにわかっていいのか。あの解説のみが唯一の解釈と思ってしまわないか。書かれた塔をCGで上下左右から見ていいものか。

美術展がまさに見世物となった気がした。小さくてもわからなくても、本物だけを一生懸命考え込みながら見る楽しみはどこかに行ってしまった。この展覧会は7月18日から大阪の国立国際美術館でも開催される。美術の専門家の意見を聞きたい。

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