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2017年5月15日 (月)

佐藤優と北原みのりの対談を読む

佐藤優と北原みのりの対談『性と国家』がおもしろかった。佐藤優の本はここでも何度か取り上げたが、北原みのりは本を読んだことがない。初の女性向けアダルトショップを開いたり、ろくでなし子さんの女性器の石膏型を展示して逮捕されたことは記憶にあるが。

この2人の組み合わせが珍しくて、本屋で買った。かなり自由な対談だから論理的な進行ではないが、それゆえに本音があちこちに見えておもしろい。

一番興味深かったのは、「性の自己決定」をめぐる話。佐藤は言う。「若い人たちの性へのハードルが低くなっている原因の一つとして、援助交際を自己決定としてもてはやした、90年代の宮台真司さんのような言論人、有識者の罪は大きいと思います」

この「自己決定」の論理が、最近は日韓の慰安婦問題でも使われるという。強要しなくても従わざるをえない大前提としての構造がある中で、「彼女たちの自由な選択だ」と言うのは確かにおかしい。佐藤と北原は、日本大使館前の少女像を撤去する日韓合意も支持しない。一般的には評価の高い朴裕河の『帝国の慰安婦』さえも批判する。

佐藤はAKB48を「性的搾取」と言う。北原は「メンバーは恋愛しちゃいけないのがルールとか、男性ファンの性欲を満たすために、彼女たちの人権を無視しているようにしか見えないです」

佐藤は他人に危害を与えない限り何をしてもいいというJ・S・ミルの「愚行権」を支持するが、覚醒剤や児童ポルノは他者に危害を与えるとする。彼は「AKB48」のやり方は、アメリカのスタンダードで見た場合は児童ポルノか児童への性的搾取という。

最近では性的搾取でも市場原理が進み、「サンキュー」という30分3900円のデリヘルチェーンが流行っているらしい。女性が搾取されるだけでなく、収入が低い男性ほど風俗にはまり、依存症になる。男女ともに、社会との関係がなくなってゆく。

佐藤は、鈴木宗男や森喜朗の例を挙げて、野心のある政治家は女を買わないという。学者でも「学術的な探求心や野心が性欲を抑えることができる例をたくさん見ている」

佐藤「外務省にいるときは、『巨人の星』が好きだった上司や同僚は警戒しましたね」「何で世の中がこんなに男権的で、性風俗が消えないかって、『巨人の星』を読んでそこに仮託してるような連中にまだ権力があるからですよ」

私は野心はもはやほぼないが、女は買わない。しかし白状すると、『巨人の星』は大好きだった。

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