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2017年6月22日 (木)

山村アニメの新世界

8月5日公開の山村浩二の新作短編9本を集めた「山村浩二 左目と右目で見る世界」の試写を見た。この監督の作品は米アカデミー賞にノミネートされた『頭山』を初めとして数本しか見ていないが、今回は新しい世界に入りつつあると思った。

たぶん、完全に日本的な世界の作品と、とても日本人が作ったとは思えない西洋的な作品に分かれたといえるのではないだろうか。

一番日本的なのは、『古事記 日向編』だろうか。古事記をテーマにして天照大御神が天の岩戸に隠れる話などが、ポップに展開する。これは12分長で物語性もあって右から左に展開する絵巻物のようでなかなか楽しめた。

『鶴下絵和歌巻』と『干支1/3』は2分程度の小品で、前者は俵屋宗達の鶴の絵が動く。実際に宗達はこういうふうに見せたかったのではと思うほど、並んだ鶴が爽やかに羽ばたき、絵巻が現代に蘇る。後者は20年分の干支が現れて、その漢字が動物のように動き出す。

今回一番長いのは14分超の『サティの「パラード」』。これはエリック・サティのバレエ音楽を今風にアレンジした曲に、アニメが展開する。いかにも20世紀初頭のパリといった賑やかで可愛らしいバレエだが、その鮮やかな色使いとユーモラスなダンサーや怪物たちの登場に目を奪われる。

コクトーがもしアニメを作ったらこんな感じだったのではと思うほど、繊細で夢のような画面の連続だ。あるいはフランスで活躍中のベトナム系イラストレーター、ピエール・ルタンの作品のようでもある。とても日本人の作品には見えない。

6分強の『怪物学抄』には、文字通り怪物が次々に出てくる。「鎧という名の武器」「涙の味」「悪魔と同じ大きさ」とか抽象的なものが多いが、これは架空のヨーロッパの怪物学者による架空の公文書らしい。これがヘンデルのチェンバロ曲に乗って出てくると、何だかもっともらしく見えてくる。これまた日本的感性からはほど遠い気がする。

山村監督の場合はすべてを一人で手書きで描いているはずだから、数分のアニメでも膨大な時間がかかるはず。今回のは9本で約54分、この5年ほどのものだが、その豊かな想像力の古今東西への広がりととびきりの楽しさの共存には驚くしかない。

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コメント

山村アニメ面白そうですね!

投稿: 川尻 | 2017年7月25日 (火) 10時13分

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