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2017年6月26日 (月)

なぜかロメールに通う:その(2)

もう終わってしまったが、ロメールについてまた書く。これまで(たぶん)見ていなかった『モンソーのパン屋の女の子』と『シュザンヌの生き方』を見た。ともに1963年の白黒作品で、28分と52分という中編で〈6つの教訓物語〉の1本目と2本目にあたる。

2本とも人間の恋愛の行方の不思議さをリアルに、そしてさらりと語る。私はこのシリーズの3本目にあたる傑作『モード家の一夜』にそのままつながる作品だと思った。どれも主人公の男のナレーションがうるさいほど響き、白黒のなかでうぶな女性のちょっとした陰りの表情が、人生の非情を物語る。

『モンソーのパン屋の女の子』の主人公の学生は、自分の住むパリのモンソー地区でよく会う女性、シルヴィーに恋をする。何とか話しかけることに成功するが、その後はなかなか出会うことができない。何とか出会うべくうろうろしているうちに、パン屋を見つけて通うことになる。

そのパン屋で働く女の子ジャクリーヌを気に入った主人公は、どんどん話しかけて、彼女の注意を自分に向ける。彼女は少しずつ心を開いてゆく。しまいにはデートの約束を取り付けるが、ちょうどその直後に足を怪我していたシルヴィーと会い、夕食に誘う。

すごいのは、「それから後に私はシルヴィーと結婚した。近くに住んだので、パン屋を訪れた」と語りながら、パン屋を再訪する場面。ジャクリーヌはいなかったが、顔見知りの女主人の表情がくっきりと写った。人生の残酷さそのもの。

『シュザンヌの生き方』が、奥手で何でも人についてゆくタイプのベルトランが主人公で語り手。万事に積極的な友人、ギョームとリュクサンブール公園近くのカフェでシュザンヌに出会う。彼女は働きながらイタリア語を勉強していたが、ギョームに惚れてしまう。

ギョームはシュザンヌの好意を利用して、何かとお金を出させる癖に、肝心な時は逃げる。シュザンヌはベルトランにも近づくが、彼は別の女性、ソフィーに惹かれていた。しばらくたって、ベルトランはシュザンヌがハンサムな別の男と結婚することを知って驚く。

シュザンヌは最後には突然幸せになるが、それまでの苦悩の表情はジャクリーヌと同じ。2人とも黒に近い褐色の髪で、濃い顔つきで体も豊満。彼女たちの顔が歪みのが痛々しい。一方、2人の主人公が選ぶのはシルヴィーもソフィーもブロンドの髪でやせ型。考えてみたら『モード家の一夜』もそう。

恋愛と結婚の偶然性と残酷さについて、ロメールほどクールに語る監督はいない。

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