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2017年6月12日 (月)

学会について考える

今はいわゆる学会シーズンで、私も映像関係の学会のために地方に行ってきた。大学に移って8年が過ぎたが、まだ大学という環境に違和感がある。それ以上に不思議なのが「学会」という世界。

そもそも学問として、文系は理系に比べてかなり大ざっぱ。ましてや文学・芸術系だとなんでもありの部分がある。世の中に発表される文学や芸術が本来自由なものだから、その研究も相当に恣意的だ。

だからその学会と言っても、発表はジャンルもレベルも方向もいろいろ。そのうえ私の属する学会は、研究発表と作品発表に分かれる。どちらも25分以内に発表し、5分間の質疑応答を受ける。

同時に5、6か所で発表が行われるのが普通で、参加者は関心に応じて会場を移動する。私のような教員だと、教え子の発表を最優先にする。それから知り合いや同僚の発表を聞く義理もある。今年もそうだったが、発表の進行役をさせられることも多い。そのうえ、おもしろそうな発表が同じ時間帯にあることも。

あれやこれやで純粋に興味のある発表はなかなか聞けない。今年もいくつかを聞いて思うのは、若い人の発表は聞きづらいということ。ただ準備した原稿を読むことが多く、難しい言葉が多いと、何のことかわからない。それに内容も思いつきが多い。ある監督における「落ちることのテーマ」と言われても、すぐに「だから何だ」と思ってしまう。

さすがにベテランの発表は、まず人に聞かせる形ができている。何を言いたいかが明確だ。それでも不満なのは、海外の最新の文献を読んで、この監督の最近の研究はこうです、という紹介が多いこと。聞いて勉強にはなるけれど。

私にとって一番おもしろいのは、映画史的な発見。監督の演出メモが見つかって、これまでの解釈を大きく覆すといったたぐい。例年1つくらいはそうした発見があるが、今年は聞いた発表には、そうしたものはなかった。

それでも毎年学会に行くのは、なかなか会えない知り合いや教え子と年に一度会うことができるから。発表の合間や昼食、懇親会などで「元気?」「どうしてる」と声をかけ、近況について語り合う。この映画がよかったとか、すごい本が出たとかの情報交換も多い。

今ではネットで映像をやりとりできる時代なのに、カンヌなどの映画祭がますます盛んになり、同業者が年に一度集うのも、そんな理由によるものだろう。しかしカンヌは去年行って楽しかったが、学会というのは、私にはどうもあまり向かない。

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