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2017年6月25日 (日)

困ったお客さんの話:その(1)

元『レオン』編集長の「ちょい悪おやじ」こと岸田一郎氏が、美術館ナンパを指南してネットで非難を浴びたというのを読んだ。「熱心に鑑賞している女性がいたら、さりげなく「この画家は長い不遇時代があったんですよ」などと、ガイドのように次々と知識を披露する」といいと言ったようだ。

この人は昔からとんでもない勘違い男だと思っていたが、相変わらず。彼のことはどうでもいいが、思い出したのは、イベント屋をやっていた時の困ったお客さんのこと。

かつて公立美術館は65歳以上は無料だった。新聞社と組むと国立は有料にできたが、都立は無料だった時代が長かった。そこで現れるのは、65歳以上の「解説おじさん」たち。

暇で無料だから、毎日のように現れて絵や画家の解説を始める男性がいた。彼らはそうして女性に話しかけるのだが、それをありがたく聞く人もいたので、あながち悪いとも言えない。たまに度が過ぎて抗議が出ると注意をしていたが、数日たつと始まった。

お客さんの厄介さで言えば、映画祭は展覧会の比ではない。そもそも映画好きは私も含めて自分勝手な人間が多い。映画をたくさん見れば人生を学ぶことができる、というのは大間違い。

映画を見過ぎると、映画と私、スクリーンと私、監督と私、スターと私の袋小路に入り、自分だけがその映画をわかると勘違いする。そして他人の迷惑がわからなくなることも。

昔、フィルムセンターでジャン・ルノワールの全作品上映をやった時には、日時指定でない前売り券を売ったために、回によっては入れないお客さんが出た。「これから後のお客さまははいれません」と言ったとたんに大騒ぎになった。入れなかった観客に説明をする最中に、手をかまれたフィルムセンターの方もいた。ある女性客は私の勤めている新聞社の正面玄関で、「金返せ」とプラカードを掲げた。

今では復元版DVDも出ている『十字路の夜』は、フランスから借りたが状態がよくないため、1回だけの上映だった。当然大騒ぎとなったが、ようやく帰ってもらって中に入ると、お客さんから「席がない」。定員分しか入れていないのでありえないはずだが、10人近く席がなかった。

とりあえず通路に座ってもらい上映を始めて、関係者で集まった。どこからか不正入場した者がいるのは間違いなかった。私は終了時に半券を確認したらどうか、場合によっては警察に立ち会ってもらおう、と主張した。しかしフィルムセンターの方は良識があり、「お客さんを疑うのはまずい。警察は論外」とのことで、その場は何もせず、翌日から不正入場する可能性のある通路をすべて塞ぐことにした。

それから半年後、東大で非常勤講師を始めた私は、学生と酒を飲んでいて、その犯人たちが東大生だったことを知った。

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