« 山村アニメの新世界 | トップページ | 『家族はつらいよ2』の強さ »

2017年6月23日 (金)

ジャコメッティの変容

ジャコメッティはいつも気になる彫刻家だったが、これまでその作品をまとめて見たことがなかった。国立新美術館で個展が始まったので、すぐに行ってみた。

ジャコメッティと言えば、ガリガリの極端に細い人間の姿で有名だ。これがなぜか戦争と資本主義の時代に生きる人間の姿のような気がしていた。ところが今回戦前からの作品を見ると、時代ごとに変容を続けたことがわかる。

1920年代から30年代はアフリカ美術やキュビズムに影響を受けた作品も多い。あるいはピカソやブランクーシそのもののようなものもある。

ところが1940年代半ばに突然数センチの小さな人間像が出てくる。作品によっては3センチほど。これらが私には一番印象に残った。

それからしばらく後に、50センチほどの高さの人々の群像があった。これはすべて極細の人々で、その組み合わせによる空間的な緊張感がすごい。それから犬や猫があったのにも驚いた。ジャコメッティの手にかかると、猫さえも哲学的に見える。

1950年代後半から《ヴェネツィアの女》シリーズを始めとする、よく知られた1メートル強の1人像が続く。こちらは今までよく見ていたが、その孤高の姿が10体ほど並ぶとやはり慄然とする。

そのほか、膨大な数のデッサンがあった。これらは落書きのようで、私のような素人にはあまりピンとこない。もちろんその1点でも今では高価なものだろうが。

ジャコメッティ彫刻のさまざまなパターンを見られて、見てよかった。しかしあの新美の広い空間ならば、もっと多くの、少なくとも倍くらいの彼の彫刻を見たかったと思った。

この展覧会は9月4日まで。人間存在について考え抜いた形の数々は、暑い夏の清涼剤になるだろう。ジャコメッティの次に見たい個展を彫刻家はブランクーシだが、どこかでやらないだろうか。


|

« 山村アニメの新世界 | トップページ | 『家族はつらいよ2』の強さ »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/65419146

この記事へのトラックバック一覧です: ジャコメッティの変容:

« 山村アニメの新世界 | トップページ | 『家族はつらいよ2』の強さ »