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2017年6月24日 (土)

『家族はつらいよ2』の強さ

ようやく山田洋次監督『家族はつらいよ2』を劇場で見た。いかにも二番煎じな題名の続編だが、新聞の映画評では評価が高かったので気になっていた。見てみると、確かにぐいぐい引っ張られた。

山田監督の『東京家族』は小津の『東京物語』のリメイクだったが、そこに出演した8人の親子が『家族はつらいよ』にも引き継がれた。今回も橋爪功と吉行和子の老夫妻とその子供たちが演じる。つまり実際は第三弾だが、今回はこれまでの2本よりずっといい。

これまでは女性たちに比べて、橋爪を始めとして長男役の西村雅彦や長女の夫役の林家正蔵たちのコミカルな演技がやり過ぎの観があった。無理に派手に演じるさまが、カリカチュアのようで見ていて気になった。ところが今回はそれが全体のスムーズな流れに収まっていた。

前回は老夫婦の離婚騒動だったが、今回は前半では橋爪の高齢者運転が問題になる。子供たちが心配して家族会議となるが、前日の夜に橋爪は高校の同窓会で飲み過ぎて、友人を連れ帰り泊めることに。

小林稔侍演じる友人の丸田は裕福な生まれだったが、事業に失敗して今では警備員をしながらの一人暮らし。その境遇をめぐって、「無縁社会」が浮き彫りになる。バーで、彼が好きだった銀杏をみんなで食べるシーンに泣いてしまう。

丸田は翌朝亡くなってしまい、その後始末を巡って一家は大騒ぎ。うなぎ屋の出前や新米の間抜けな警官も加わっての「てんやわんや」となり、家族会議はあらぬ方向へ発展する。

物語はわかりやすく、撮影も編集も流れるように進んで、観客はまさに一喜一憂する。それは、私の近くに座っていた60代女性グループの「あらまあ」「そうそう」というお茶の間のような反応から見てとれた。

山田監督は一時期は『たそがれ清兵衛』のような時代劇を撮ったり、『母べえ』のような戦時中のシリアスなドラマを手がけてきたが、ここへ来て、「寅さん」シリーズの本来の山田喜劇に戻ったようだ。つまり、人間の悲喜劇を社会的視点を交えながら楽しく見せるというパターン。

本当のことを言うと、個人的にはその山田喜劇が描く「庶民像」がどうも嘘くさくて苦手だけれど、今回の映画のようなスムーズさで見せられると、その「強さ」に思わず見入ってしまった。

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