『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』を読む
水野和夫氏の本は2年ほど前に『歴史の終焉と資本主義の危機』を読んだが、新著の『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』を買った。「閉じてゆく帝国」とはもちろん今のアメリカやイギリスのことだろうが、それと資本主義がどんな関係になるのか知りたいと思った。
前半に書かれていることは前著とほぼ同じ。現在の日本の超低金利は16世紀以来で、これは中心が周辺を搾取する型の資本主義の終焉を示す。前著と違うのは、その終焉を迎えた国が、日本だけでなくドイツも加わっていることだ。
前著以降に起こったフランスなどのテロとそれに対する非常事態宣言や日本の共謀罪などの対策は、彼によれば「法治国家」から「安全国家」に移行したことを示す。それはヒトラーと同じように国内に恐怖を作り出すことで、自身の存在理由を維持する。それは「悪しき中世」に戻ることで、まさに近代の終焉を示す。
ちょっと驚いたのは、日本のバブルがアメリカの軍拡路線を支えるために作られたという指摘。「中曽根康弘政権下での不自然な金利抑制政策や内需拡大政策(リゾート開発ブームなど)は、軍事費を日本の資本でまかないたいというアメリカの思惑を忖度した結果だった」
ドイツもアメリカの軍拡を資金的に支えたが、その後が違う。日本はこうしてアメリカ帝国の傘下に収まることを選んだが、ドイツは東西統一をなしとげてEUを推進してユーロを作ることで、ドル支配から脱却した。
中国はどうなるのかと言えば、「過剰生産」という問題を抱えている。これは「一帯一路」といった販路拡大策では吸収できない。中国は16世紀の英国のように近代を始めたばかりだが、近代化=「13億総中流」を実現する前に、過剰投資によって近代=成長の時代が終わってしまう。
現在EUは、「資本帝国」の収奪を防ぐために、経済圏を「閉じた」方向に舵を切っているという。これが近代の前の中世を今風に再現する「新中世」につながるという。日本がそのような「定常状態」を達成するには、財政赤字の解決とエネルギーの自給自足、地方分権が必要と書く。実は赤字解決とエネルギー自足については前著に書かれていた。
それは「より遠く、より早く、より合理的に」から「より近く、よりゆっくり、より寛容に」への転換だという。それには中世のようなリベラル・アーツ、つまり教養主義が必要らしい。「「愛・美・真」の3つを人類史上初めて追求できるのは、10年国債利回りがゼロ%となり、資本の希少性を解消した日本とドイツだけであることがわかります」
突然、「真・善・美」が出てきてびっくりしたが、とにかく文系学部はいらないという現政権とは全く逆の発想であることは間違いない。私としては大歓迎だが、個人的には「より近く」「より寛容に」はともかく、「よりゆっくり」をできるかはわからない。
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