「タイ」展の楽しさ
東京国立博物館で8月27日まで開催の「タイ~仏の国の輝き~」展を見た。そもそも私の仏教に関する知識はかなり低い。たぶん、文学や映画や美術でよく触れるキリスト教より知らない。だから日本の仏教とタイのそれがどう違うのかさえよく知らない状態で見たが、それなりに楽しめた。
展覧会を見てまず思ったのは、仏像が日本のものよりエレガントでセクシーなこと。みんな手足が妙に長い。腰が高いところにあるし、手の指に至っては異常なくらい細く長い。そのうえ、表情はいつもどこか笑っているようで穏やか。
一番驚いたのは、どの仏像にも豆粒ほどの乳首があって、ピンと立っていること。そもそも日本の仏像のように衣装に凝っていない。薄いものが掛けてあるだけで、体の線もくっきり。肩の幅は広いがなで肩で、女性的と言えよう。さて、日本の仏像に乳首があっただろうか。
私にはこのなよっとした男性像が、トランスジェンダー風に見えた。ひょっとするとタイではある種の理想だったのではないか。最近のタイ映画ではゲイが出てくることが多いことを考えた。
仏像のなかで何とも優雅なのは、「遊行図」と呼ばれる歩いているもの。一番大きいのは14~15世紀の《仏陀遊行図》だが、挨拶でもするように左手の手のひらを軽く見せて、右手は長い指を垂れたまま。左足を軸にして右足が少し引いているので、歩いている感じが出ている。
この像は13世紀に成立したタイ族最初の王朝「スコータイ」に流行したものという。仏陀が大衆に教えを普及している感じだろうか。仏陀が残した足跡を見せる《仏足跡》という展示物もあった。
スコータイ王朝は北部だったが、14世紀に南部にできたのがアユタヤー王朝。こちらは19世紀半ばまで続き、日本との関係も深かった。交易の国として栄えたが、最近海中で見つかったこの時代の船は、ペルシャのものだったと書かれていた。
つまり、当時のタイは中国や日本だけでなく、中東の国々とも貿易をしていたことになる。沖縄との交易の資料もある。もちろん江戸時代の初めには、山田長政を中心に日本人町もあった。展覧会には山田の活躍や日本人町の繁栄を描く絵も展示されている。
タイと言えば、オレンジの服を着た僧侶たちが町を歩く姿を思い出すが、これは日本などの大乗仏教にはない。タイは上座仏教(昔は小乗仏教と言ったはず)で、出家するか出家した僧侶を支援することが重要という。そんなことを改めて学んだ展覧会でもあった。
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