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2017年7月 8日 (土)

『孤獨の人』に描かれた皇太子

必要があって、西河克己監督『孤獨の人』(1957)を名画座に見に行った。今の天皇が学習院高等科に通っていた頃の「ご学友」たちとの交流を描いた日活の珍しい映画だが、「珍品」というのではなく爽やかな佳作だった。

前年に出た藤島泰輔の同名小説を映画化したもので、藤島はかつて皇太子の「ご学友」だった経験に基づいて書いたという。映画は、皇太子を乗せた車が学習院に向かうところから始まる。高等科の学生、千谷(津川雅彦)を中心に、先生からも「殿下」と呼ばれる皇太子の高校生活を描く。

授業での新人教師イジメ、奈良への修学旅行、千谷の叔母(月丘夢路)との恋、岩瀬(小林旭)の女子高生(芦川いづみ)との出会い、みんなの憧れの鳥羽頼子(稲垣美穂子)を誘っての乗馬会(結局、皇太子は不参加)、終盤は有名な「銀ブラ事件」。

皇太子はいつもそこにいるのだが、画面の外だったり、遠景だったり、白い手袋を持つ手だけだったり。きちんと顔が写ることはない。それでもみんなといることを楽しみながらも、最終的には宮内庁の侍従の言う通りに動く。時には「ご学友」が女友達といるのを羨ましく思いながら。

「ご学友」たちもそんな殿下に十分に敬意を払いながらも、できるだけ自由を味あわせようと努力する。それが「銀ブラ事件」となって現れる。これは「ご学友」の3人が皇太子を銀座に連れ出して大騒ぎになった、実際にあった事件らしい。

銀座の喫茶店「花馬車」に入るが、支配人が気づいて挨拶に現れたあたりから警察に気づかれて大騒ぎに。侍従や大夫から大目玉を食らうが、連れて行った学生は「殿下のためにやったんだ」と言い張る。

この事件もあっけない幕切れで、全体にドラマらしいものはない。皇太子の高校生活の日々を淡々とした描いたものだが、当時の皇室の生活(たぶん今もあまり変わらない)がきちんと浮かび上がる。初等科出身者のエリート意識などもいかにもありそう。学習院の正門や、目白駅、学習院女子部、銀座の並木通りなどのロケも楽しい。

津川雅彦が抜群に爽やかだが、スターになる前の若い小林旭が芦川いずみと共に何とも新鮮で初々しい。教師役の大坂志郎や月岡夢路の別れた夫を演じる芦田伸介、津川雅彦の父役の清水将夫などのベテランたちがしっかり脇を固めている。

上映は16ミリだったが、プリントの状態はよかった。ぜひDVDにして欲しい。

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