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2017年7月15日 (土)

「サンシャワー」展に考える

国立新美術館と森美術館で同時開催の「サンシャワー 東南アジアの現代美術展」を見た。見たけれども、この展覧会についてどこから書いていいのかわからない。まず、会場に作品リストがなかった。

「うつろう世界」とか「さまざまなアイデンティティ」とか9つのセクションに分かれているが、抽象的な分け方が多くて、なぜある作品がそこにあるかわからないものも多い。アセアン10か国から80組を超すアーティストの作品が集まっていて、全体として混乱した印象が残った。

もし出品リストがあれば、私はそこにメモを書いてゆくのだが、それもできない。国立新美術館では「HPにあります」と言われたが、HPにはどの作家がどちらの美術館に展示されているかしか書かれていない(つまり間違い)。森美術館では、「現代美術だからまだできていない」と意味不明なことを自信たっぷりに言われた。

そういえばカタログもない。たぶん森美術館の人はそれと勘違いしたのだろう。出口にはカタログは8月にできる予定で、3888円と書かれている。インスタレーションの多い現代美術展はそういうこともあるが、その場合は1000円程度のガイドがあると助かるのだが。もちろんまず展示リストが欲しい。

企画展会場としては展示面積が日本で最も広い2館を使って、80を超すアーチストを紹介しているのに、観客の感想が「ああ、いろいろ変わった作品がありました」ではあまりにもったいない。1館だったらもっとコンパクトでわかりやすかったと思う。

あるいは国別に並べたら、少しは見やすかっただろう。「東南アジア」と言っても歴史も経済も全く違う。国別ならば各国の事情や歴史を考えながら見ることができた。

たぶん両美術館の学芸員たちは、そんな考えはカッコ悪いというに違いない。あくまで個人としてアーチストを見ているからと。ならば「東南アジア」というまさに政治的くくりの展覧会自体が、まずダサい。東京オリンピックの2020年まで、安倍首相から東南アジア関係に巨額の予算をもらった「国際交流基金アジアセンター」が主催だから仕方がないか。

会場にキュレーターの名前や調査の写真や映像があったが、両館の学芸員など10人以上書かれていた。みんなで楽しい調査旅行をした様子が伺えたが、キュレーターの数が多いことも内容が混乱した印象を与える原因かも。

アジア美術にくわしくない私でも長年現代美術は見ているので、タイのモンティエン・ブンマーとかインドネシアのヘリ・ドノとか何人かは知っていた。今回知った、スラシー・クソンウォンの毛糸のインスタレーションとか、フェリックス・バコロールの風鈴のインスタレーションとか、おもしろい展示はいくつもあったのに、とても覚えられない。フロワーマップに作家名の入ったリストが本当に欲しかった。

「国際交流基金アジアセンター」がつく最近の文化イベントは、それを支える政権と同じく、無意識のうちに傲慢なのかもしれない。「共催」を見ると、なんと「朝日、東京、日経、毎日、読売、NHK」と並んでいるので、これでマスコミは批判しないかも。あやうし、日本。

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