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2017年8月11日 (金)

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』のおかしさ

傑作というつもりはないが、『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』を劇場で見てかなりおかしかった。そもそも原題でもある「ファウンダー」=創立者だが、これは創立者の映画ではない。私はマクドナルドはまず食べないし(最後に食べたのは20年ほど前のフランスの田舎か)、その歴史も知らないので、まずそこに驚いた。

この映画は、マクドナルドを創立したマックとディックのマクドナルド兄弟から、その権利を買い取って全世界に広げたレイ・クロックという男の話である。つまり「ファウンダー」ではないが、終盤にはレイの名刺に「ファウンダー」と刷っているから笑ってしまう。

この行為に象徴されるように、いかにも怪しげなレイが驚異的な頑張りでマクドナルドをチェーン化し、兄弟から遮二無二権利を奪い取ってゆく。もともとレイは、紙コップを売ったり、マルチミキサーを売ったりする何でもセールスマンだった。

ある時ミキサー6台の注文を受けて、どんな商売をしているのかとカリフォルニアに見に行く。そこで「うまい」「安い」「待たせない」マクドナルドのハンバーガーを見て衝撃を受ける。1954年、レイが52歳の時だが、それからフランチャイズを提案して全米に広めてゆく。

コカコーラのタイアップや粉のミルクシェークなどを提案するレイと「金儲け主義ではない」と突っぱねるマクドナルド兄弟の確執が見ていて本当におかしい。レイを演じるマイケル・キートンが、ゲスで狡猾な中年男をいい感じに見せる。

レイのモットーはPersistance。「根気」と字幕が出るが、「しつこさ」の方がいいかもしれない。マクドナルド兄弟に何度も喧嘩を挑み、最後は金の力で押し切る。彼は兄弟になぜ自分の名前のチェーンを作らなかったのかと聞かれて、「マクドナルド」という名前がいいと思ったと言う。「この名前は、いかにもアメリカじゃないか」

監督は『ウォルト・ディズニーの約束』などで知られるジョン・リー・ハンコック。50年代アメリカの再現が実に巧みだし、レイの周りに次々と集まってくる人々の造形もうまい。

平日の昼間に見たが、会社員も含めて男性の率が高かった。映画館にはレイ・クロックの伝記も置かれ、そこには柳井正と孫正義の序文もあるので、いわゆる「独立」を目指す男がまじめに見に来ているのかもしれない。

私は父親が失敗した事業家だったので、どうしても安全な道ばかり歩んできた。年を取ると、どんな映画を見ても自分に帰ってくる。ここまで書いた後に、「ファウンダー」という題名は皮肉なのだとわかった。それにしても、世界で食べられている食料の1%がマクドナルドという事実に震える。

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