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2017年8月26日 (土)

玉音放送の本当の中身

最近、映画と天皇について調べているが、映画で天皇の存在が一番出るのは「玉音放送」ではないだろうか。特に「耐え難きを耐え忍び難きを忍び」という一節はテレビでもよく出てくる。ところが考えてみたら全文を読んだことはなかった。

2003年に出された小森陽一著『天皇の玉音放送』は、当時買って読んだ記憶はあるが、改めて読んでみた。この本には何と玉音放送のDVDまで付いている。

「玉音放送」の正式な名称は「終戦の詔書」。この本には国立公文書館にあるオリジナルの写真が7ページにわたって掲載されている。これを細かく読むと一番驚くのは、「米英二国に宣戦せる所以も亦実に帝国の自存と東亜の安定とを庶幾するに出でて他国の主権を排し領土を侵すか如きは固より朕か志にあらす」という部分。

「まず第一に、アメリカとイギリスに対する太平洋戦争が「自存」自衛の戦争だ、という意味付けにおいて、侵略戦争だったことを隠そうとしていることがわかる。第二に「帝国」と「東亜」を一旦分離したうえで改めてセットにしたことで、明らかに「他国の主権を排し領土を侵」してきた一連の侵略戦争の歴史がなかったかのように装われている」

もちろん受諾したポツダム宣言のもととなるカイロ宣言には、台湾、澎湖諸島を中国から奪い、韓国を植民地にしたことが非難されている。それを認めたのに、国民向けには、それらがなかったように述べていることになる。

この本によれば、これが出される前に何カ所かが訂正されたという。「戦局必ずしも好転せず」という部分はよく知られているが、ここは「戦勢日に非なり」だった。阿南陸軍大臣は、これではこれまでの大本営発表が誤りとなるからと書き換えさせた。

原案には「朕は忠良なる爾臣民の赤誠に信きし常に神器を奉じて爾臣民と共に在り」が「朕は誠に国体を護持し得て忠良なる爾臣民の赤誠に信きし常に爾臣民と共にあり」となった。「「神器を奉じて」などと書くと、アメリカ軍が「三種の神器」に注目し「無用の詮索」をすることを恐れたのである。

この期に及んで、何とせこい議論だろうか。この本では全文が詳細に分析してあり、一言で言うと、天皇の戦争責任が明らかに追及されている。最近はどちらかというと、昭和天皇は戦争を止めようとしたという論調が多いようだが、少なくとも「玉音放送」はそうではない。

みんな知っているようで実は知らない「玉音放送」。学問とは、こんな基本に立ち返るためにあると思った。


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