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2017年8月30日 (水)

鈴木邦男『天皇陛下の味方です』に考える

例によって天皇関係の本を読んでいるが、自分が心情的に近いなと思ったのは、実は鈴木邦男氏だった。もちろん彼はかつては一水会の代表で、新右翼の論客だった。この本は「亡き三島由紀夫と野村秋介に捧ぐ」と書かれているし。

昔、朝日新聞社に転職して一か月後くらいに、野村秋介の事件が起きた。朝日の社長室で中江社長に謝罪を求めた後に、目の前でピストル自殺した。何も知らずに昼食に行った私は、帰りに会社の上をヘリコプターがいくつも舞っているのを見て、慌ててテレビをつけて知った。

たぶんその時に初めて「一水会」や新右翼という言葉を知ったのではないか。私は「自然と左翼」だった。高校生の時から加藤周一や大江健三郎を読みだして、何となくフランス系で左翼系の考えが見についた。学生運動は正しく、天皇はいらない、自民党より社会党と思っていた。

だから朝日に入った時、よかったと思った。自分でも昔から読んでいたし、読売に比べたらどうみても左だし。それでもソ連が崩壊し、社会党がほぼ壊滅的になって、1990年代あたりからはそうとも言えなくなった。

もちろん革命は起きないし、40歳を越して給料も上がり、自分自身が資本主義のなかで小さな贅沢をすることに喜びを感じていた。高いホテルに泊まり、豪勢なレストランに行くようになった。もはや天皇制を否定することだけが、最後の「元左翼」の証だったかもしれない。

ところが、去年の天皇のビデオメッセージにやられた。退位問題に関してのものは、あまりに謙虚で誠実で私の心を打った。それから昭和天皇が被災地やパラオなどの激戦地に行く姿を見て、涙するようになった。「朝日」の「てんでんこ」の現天皇の言動に、毎朝ウルウルとなった。どうしたことか。

鈴木邦男氏は学生時代から「生長の家」で活動し、産経新聞勤務を経て一水会を結成する。若い頃は左翼評論家に電話をして、脅迫していたという。この時の井上ひさし氏とのエピソードは抜群におもしろいが、後日。

今ではネトウヨを嫌悪し、反韓、反中の動きを危惧する。そして安倍首相の軍国主義的方向を非難する。現天皇の退位や女性天皇を歓迎する。これは私と同じ。

あえて違うのは三島由紀夫に対する思いだろうか。今まで私は三島に対する思い入れはなかった。鈴木氏は書く。「政治思想を語る文化教養人はいっぱいいたけれど、自分が言ったこと、書いたことを、その通りやってみせたのは三島由紀夫だけだった」「現在の「妄想保守」と三島が決定的に違うのは、三島は命を賭けたこと、その一点につきます」

三島はともかく、この本の根底に流れる「情け」のような感情は、私も共有している気がする。

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