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2017年8月16日 (水)

「刀葉林」に慄く

出光美術館で9月3日まで開催の「祈りのかたち」展を見た。副題が「仏教美術入門」と書かれていたので、私にはちょうどいいかと思った。行ってみるとすべてが出光美術館の所蔵品で、中国から6世紀に伝わった仏教の流れがわかる構成になっていた。

最初は「仏像・経典・仏具」で、奈良時代の《絵因果教》で釈迦の生涯を見せてから、それ以前に中国で作られた小さな金剛の仏像が並ぶ。たぶん中国から大事に運んだのだろう。あるいは江戸時代の仙厓の七福神や伝土佐光信の十六羅漢など。

次が「神秘なる修法の世界」は密教の世界を見せる。以下はHPの解説のコピペ。
「ヒンドゥー教の台頭により、一時的にインドで劣勢となった仏教は、ヒンドゥー教の要素を取り込むことによって大きく変貌を遂げ、再び隆盛期を迎えます。こうして、真言と呼ばれる呪文を重視したり、多面・多臂(たひ)・多足で忿怒相(ふんぬそう)という特異な姿をしたほとけ(明王)を登場させたりと、以前の仏教(顕教)とは違う要素が多い密教が成立することとなりました」

いわゆる曼荼羅図がいくつもある。これは無数の仏像がびっしりと描かれていて楽しい。実を言うと、空海が伝えた真言密教が、仏教がヒンドゥー教の要素を取り込んだものということさえ、知らなかった。

知らなかったで言えば、仏教は女性の往生を認めないなかで、普賢菩薩は女性を守るとして知られていたため、平安や鎌倉の貴族女性に信仰を集めたということも、びっくりした。宗教におけるジェンダー研究は、あるのだろうか。

今回ドキリとしたのは、浄土教の美術。極楽浄土への往生を願うわけだが、地獄の描写がすごい。《十王地獄図》(鎌倉末期)や《六道・十王図》(室町)では、さまざまな地獄図が描かれている。「衆合地獄」には「刀葉林」があって、これは美女にたどり着くために、いくつもの刀の刺さった大木を登る男の図だ。逆にハンサムな男を目指して血まみれになって登る女の図もある。

「刀葉林」では、どんなに苦労して木を登っても、女は永遠に遠ざかるという。何と恐ろしいことか。「衆合地獄」は、殺生、盗み、不倫の罪だという。こうした罪にはほかに詐欺とか親殺しとかあるが、「飲酒」とか「妄語」(うそ)まである。不倫はともかく、飲酒やうそくらいが罪なら、私はまっすぐ地獄に落ちてしまう。そんなことを考えながら、「刀葉林」を必死で登る男を眺めていた。

最後には一休や仙厓の禅画が並ぶ。これは自由で楽しい世界。仙厓の《一円相画図》は、大きな〇(まる)が描かれただけの絵の横に「これにて茶飲め」と書かれている。こんなわかったようなわからないような冗談の世界は何度見ても嬉しくなる。

それにしても「刀葉林」の図は、夢を見そうだ。

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