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2017年9月29日 (金)

『歴史に「何を」学ぶのか』を読む

半藤一利氏の本は、『昭和史』を始めとして抜群におもしろい。我々がこれまでに学校で学んだ日本史とかなり違う事実があることを、いちいち証拠を示して見せてくれるから。彼の新書『歴史に「何を」学ぶのか』は、たぶん連続講演の議事録だろうが、やはり楽しい。

今回の本のなかで一番興味深かったのが「四十年史観」。日露戦争に勝って調子に乗ったのが1905年。それから40年たって原爆を落とされて敗戦。

GHQに支配されていたのが6年余で、独立した1952年から40年たった1992年あたりがバブル崩壊の分かれ目。「やっぱり戦後日本が集結するのに四十年かかった。バブル崩壊を歴史の転換点とするならば、わたしの四十年史観から言うと、あと十五年でこの国は没落することになる」。つまり2032年頃に、日本は再び没落する。

「人びとが、悲惨な記憶を忘却しつくすのがだいたい四十年なのです。/陸戦でも海戦でも日露戦争がどれほど多くの人の生身を引き裂く悲惨な戦いであったか。それを知る世代がつぎつぎと現役を退き、入れ替わりがはじまります。知らない世代ばかりが為政者、軍務官僚となるのにかかった時間が、ちょうど四十年でした」

「ざっと見渡すと、山本五十六はじめ、太平洋戦争開戦前に戦争回避を唱えた将官には実戦経験組が多く、対米強硬論者の多くが実戦経験「なし組」だったことがわかります。「なし組」は、ただ日露戦争勝利の栄光のみを背負い、そこからたくさんの英雄譚と神話をつくりあえ、無敵帝国陸軍・帝国海軍の名のもとにあらぬ方向に国を動かしていったのです」

今後のことはあえて書いていない。しかし、戦後の日本が苦労して経済大国になり、1989年に昭和が終わる。そして1992年あたりからスルスルと落ちぶれてゆく姿は誰の目にも明らかだ。おおよそ平成になってからはロクなことはない。2020年のオリンピックで空騒ぎした後が本当に怖い。

そのほかこの本には「にほん」と「にっぽん」の読みの違いはいつからかなど興味深い内容が多いが、これは知らなかったと思ったのが、日露戦争後の論功の話。

「1907年に日露戦争で活躍した将官らを出世させて貴族に遇したのです。たとえば軍司令官クラスは伯爵に、古参の師団長は子爵、その他の師団長・旅団長クラスが男爵に、といった具合です。その数、陸軍関係者65人、海軍関係者35人、計100人の椀飯振舞でした。そのうえ、幹部軍人には金鵄勲章という論功もあった」。こんなことは習っていない。

例えば東郷神社まで作られて神様になった東郷平八郎連合艦隊司令長官は、ロシア艦隊のルートを読み違えたが、歴史では彼が見破ったことになっている。この日露戦争の美化が中国侵略や太平洋戦争の奥にあったのは間違いない。そして日本史はいまだに多くの間違いを含む。

暗澹たる気持ちになった。今朝の「朝日」朝刊での半藤さんへの1Pインタビューを読み、その思いは強まった。


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