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2017年9月 9日 (土)

ベネチアもこれで最後か:その(7)賞予想

今回の最大の特徴はアメリカ映画や英語の映画に秀作が多いことだろう。そのうえ、イタリア人のパオロ・ヴィルズィまで英語で撮っている。マーティン・マクドナーは英国の監督で、新作「ミズーリ州エビング郊外の3つの看板」Three Billboards Outside Ebbing, Missouriは英国映画という表記だが、配給はアメリカのフォックス・サーチライト。

舞台も題名の通りアメリカだ。中年女性のミルドレッドは娘がレイプされ殺されたのに犯人が捕まらないことに腹を立て、街の入口に3つの大きな抗議の看板を立てる。警察の無能を怒る内容で、当然ながら警察は怒ってやめさせようとする。

物語は彼女と警察のやり取りを看板の広告屋や弁護士を交えてユーモアたっぷりに描く。いろいろな人々を巻き込んで大胆な行動を展開するミルドレッドを演じるフランシス・マクドーマンドが抜群におかしく、見ていて爽快な気分になる。

日本では『さざなみ』が話題になったアンドリュー・ハイ監督の「リーン・オン・ピート」Lean on Peteは、15歳の少年チャーリーの放浪を描く。彼には家にいない父しかおらず、競馬用の馬を育てる男(スティーヴ・ブシェミ)に出会って雇われる。

スティ-ヴはリーン・オン・ピートという名の馬にすべてをかける。競走馬として役に立たず殺されるとわかると、自分で馬を買い取って、唯一の血縁であるマージーという叔母を探して旅に出る。絶望的になりながらも妥協せず、アメリカの田舎を彷徨う少年の姿が自然と共に描かれていて、爽やかな気分になった。

ジョージ・クルーニーが監督をした「サバービコン」Suburbiconは、1950年代後半の郊外の住宅地「サバービコン」の家族を描く。一見幸せそうに見えるロッジ家が、実は嘘と欺瞞に満ちていて、暴力や殺人がどんどん起こる。そのうえ、隣には黒人夫婦が越してきて、近所で反対運動が起きている。

マット・デイモンとジュリアン・ムーアの夫妻が見ていて本当におかしいが、全体を「悪ノリ」感が支配していて少し引いた。クルーニーの監督作品はいつもあるレベル以上だし、知的なアプローチがすばらしいけれど、どこか単調で決定打が欠けているように思う。

イギリスの巨匠スティーブン・フリアーズ監督の「ヴィクトリアとアブドゥル」Victoria &Abdulはコンペ外作品。20世紀初頭のイギリスの皇室を舞台に、インド人青年に入れ込むヴィクトリア女王を描く。老いた女王を演じるジュディ・デンチが抜群だが、かつてのこの監督のような切れ味はなく、いささか大味な娯楽作に見えた。

一日に3、4本見ると、昨日見た映画もどんどん忘れてゆく。このブログに書く前に忘れてしまう感じだ。そうこうしているうちにもうすぐ賞が発表される。勝手に賞の予想をすると、金獅子賞は「水の形」、監督賞は中国映画「天使の服は白」、女優賞は「3つの看板」のフランシス・マクドーマンド、男優賞は「レジャー探し」のドナルド・サザーランド、脚本賞は「3度目の殺人」。例によって全部はずれるかも。


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