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2017年9月16日 (土)

ベネチアもこれで最後か:その(9)そのほかの映画

まだベネチアの話かと言われるかもしれないが、「朝日」もやっと昨日の夕刊に記者の報告を載せているので、まだ触れていないいくつかの作品について書いておきたい。まず受賞作品で個人的に今一つだったのが、銀獅子の審査員大賞のイスラエルのサミュエル・マオス監督「フォックストロット」。

軍隊にいる息子が死んだと知らされた両親と、実は死んでいなかった息子の不条理な状態を、ヒステリックに描く。いかにも戦争の不条理を描いているさまが、どうも気になった。

同じく銀獅子の監督賞を撮ったフランスのグザヴィエ・ルグランの第一回長編「親権」は、両親の離婚で息子の親権を争う両親を描く。息子は母親と住んでいるが、父親は法律上許されている2週間に一度の週末以外にも会おうとして、あちこちで待ち伏せる。

世界のどこにでも起きていることだし、後半はスリル満点だが、あまりに構造が単純すぎる。是枝監督の『第三の殺人』の方が、何倍もレベルが上だと思った。

審査員特別賞のワーイック・ソーントン監督「スイート・カントリー」は、1920年代のオーストラリアを舞台に、正当防衛で白人を殺してしまったアボリジニの男を描く。こちらは悲しいアボリジニの歴史がきちんと映画的構造に収まっていて、受賞は納得。

シャーロット・ランプリングが女優賞を得たアンドレア・パラオロ監督の「アンナ」は、悪くないが賞を与えるほどではないと思った。ランプリング演じるアンナは夫は刑務所にいて、息子との仲は悪い。日々を淡々と過ごすさまが謎めいたタッチで描かれるが、何も起こらない。ランプリングの貫禄ある演技がなければとても成り立たない。

私が賞を取らないのがおかしいと思ったのは、『第三の殺人』以上に中国のヴィヴィアン・クー監督の「天使の白い服」だった。12歳の少女たちがホテルで売春をするのを見てしまった、ホテルで働く自称18歳(実際はもっと下のよう)の娘を描く。マリリン・モンローの大きな像が建てられた海岸の街の雰囲気がいい。

不満そうな少女たちの顔が実にリアルでヴィヴィッドだし、大人たちのいい加減な対応もおかしい。社会が隠そうとする大きな問題が露呈された感じがした。これはこの女性監督の2本目の長編らしいが、相当の実力なので日本でも紹介して欲しい。

そんなこんなで、ベネチアの話もおしまい。ああ、疲れた。

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