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2017年9月 5日 (火)

ベネチアもこれで最後か:その(4)

今年のベネチアの話題の一つは、VR(ヴェーチャル・リアリティ)映像のコンペができたこと。私の大学の卒制でもこの3月にはVR作品があったけれど、これまではきちんと見たことがなかった。

会場にはリド島から船に乗るという。とりあえずコンペのツァイ・ミンリャン作品とその後の時間の数作品を予約して、1時間前に船着き場に行った。ところがその島はわずか200メートルほど先で泳いでも行けそうな距離。なんと3分で着いた。どう時間をつぶそうかと思っていたが、前の上映にキャンセルが出たので入れてくれた。

シアター方式の方は、50人分椅子があり、時間になると全員がマスクを被り、ヘッドホンをつける。もちろんどこにもスクリーンはない。最初の短編2本はホラー映画系で、確かに頭を割られそうになると怖いが、遊び感覚か。

次に見た監督のジナ・キムという監督の「ブラッドレス」は、米兵に殺された実在の娼婦を描いた12分の作品。彼女の住んだ部屋や街並みが360度出てきて、そこに「カツカツ」というハイヒールの音や、酔った米兵の声などがリアルに混じる。VRでドキュメンタリーを作ると、かくも気配を感じるのかと思った。

極めつけは、やはりツァイ・ミンリャンの「捨てられた人」The Desertedという56分の作品。森の中のまさに捨てられたような部屋の中で、男は電気肩もみ機を使う。その母らしき女性は、ご飯を炊く。外は強い雨。男のもとに女が来て、二人は風呂の中で交わる。

壊れたアパートの窓には白い服を着た美しい女がたたずむ。そこにやってくる男はさきほどの男かどうか。男はまた自分の部屋に戻り、シュウマイを茹でて食べる。360度で音が強烈に響くので、ツァイ・ミンリャンらしい、森と雨と廃墟の世界にどっぷり浸かることができた。これまたVRの利点を生かしたものだろう。

そのほか、立って個別に見るセクションで、グリーンランドの温暖化を撮ったものや(その場に行った気になる)、犯人を追う警察ものなどいくつかを見たが、ゲームの延長線上にあるものが多い。ローリー・アンダーソンが台湾の監督と撮ったものは、マスクはかぶれなかったが、映像は見ることができた。引用の多い、彼女らしい映像。

ヘッドホンはマスクに固定されている場合が多いが、私は頭が大きいのでヘッドホンが届かないことがある。ある時思い切り引っ張ったらヘッドホンの小さな耳当て部分がちぎれてしまった。これはたぶん修理不能。丁寧に謝ったが、本当に恥ずかしかった。不器用な性格は海外でも直らない。今後VRといえば、この粗相を思い出すだろう。

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