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2017年10月29日 (日)

トップが変わってもあまり変わらない東京国際映画祭:その(2)

これまで見たコンペで一番良かったのは、カザフスタンのジャンナ・イサバエバ監督の『スヴェタ』。ろうあ者スヴェタは夫も子供2人も言葉が不自由で、そのうえに家のローンの催促が銀行から来る。

さらにスヴェタは職場でリストラにあう。まさに絶望的な状況の中で死に物狂いで生きるスヴェタは、どんどん恐ろしい行動に出る。そして何とか生き残る。

後味は悪いが、手持ちカメラの長回しで救いようのない日常を執念で生き続ける女性を追い続けた映像には心を動かされる。本当に絶望的な状況の時、人はすべてを犠牲にして自分と家族を守る。単なる告発やお涙頂戴を超えた「運命」の普遍へと導く強さがある。

途中まではなかなかいいなと思ったのが、イタリアのシルヴィア・ルーツィ&ルカ・ベッリーノ監督の『ナポリ、輝きの陰で』。ナポリ郊外の露天商の男を中心に、娘と妻との生活を描く。露天商のロザリオの夢は娘シャロンを歌手にすることだが、前途は多難。

カメラは時々ボケるほどに超アップで人物たちを捉え、手持ちで家の中を追い回す。ちょっとした仕草や表情がすべてを表す。ドキュメンタリーかと思い始めるが、そうでもない。10年前の映像を見るあたりまではよいが、後半が弱いし、監視カメラを家につけるあたりがわからない。

ブルガリアのリュボミル・ムラデノフ監督『シップ・イン・ア・ルーム』は、カメラマンの男が偶然知り合った女とその弟を引き取って、奇妙な共同生活をする話。ある時、カメラマンはカメラで街や列車や港で動画を取ってきて、弟に見せると弟は興味を持つ。

映像の持つ力をあらためて認識させる映画だが、設定があまりに抽象的か。冒頭以外は男はいつカメラマンの仕事をしているかわからないし、女も働いている気配もない。2人の間には愛の雰囲気が漂うがそれだけ。丁寧な撮影だが思わせぶりにしか見えない。

朝日の星取表が出始めた。授業をしながらコンペ15本を見て、空いた時間にそのほかの作品も見ている。自分が鰻の寝床のようなTOHOシネマズ六本木の奴隷になったような気がしている。

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コメント

仕事、大変ですね。
僕は、高校生の頃、結構将来についてきちんとしたものをもっていました。病院長の娘の女医と結婚して、その病院の事務長に収まり、ろくに仕事はせず、奥さんだけには十分優しくして生きるというものでした。
でも、現実は、全く違い、特許の仕事が転職のような気がして、土日も仕事してます。なかなか、思う通りにはならないものですね。

投稿: jun | 2017年10月29日 (日) 22時19分

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