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2017年10月13日 (金)

『光』の野獣性

11月25日公開の大森立嗣監督『光』を見た。最初に離島の少年少女の物語が出てくる。大津波の発生と共に強烈な音楽が流れ、舞台は25年後の東京になる。

中学生の信之と関係を持つ同級生の美花。それを知っている年下の輔(たすく)は、父親から虐待を受けている。そこにさらに大きな事件が起こる。そしてすべてを流す大津波。しかし輔は証拠写真を持っていた。

こうした過去を封印しながら、25年後に生きる3人。信之(井浦新)は公務員で結婚して娘がいて、美花(長谷川京子)は女優としてテレビに出ており、輔(瑛太)は肉体労働をしながら信之の行方を知り、その妻(橋本マナミ)に近づいて関係を持つ。

輔は信之や美花を脅すが、さらに輔の父親が現れて息子に金をせびる。大津波で流されたはずの過去は一挙に蘇り、彼らを狂気に導く。

大森監督の映画らしく、ドラマ運びは時々いいかげんになって、情念だけが走り出す。静かな顔をした信之が一番恐ろしい暴力を秘めている。何かを抑えているような妻も不気味だし、エロチック。輔は暴力的に見えて、ずっとおとなしいかもしれない。途中で夢のようなシーンも出てくるが、見終わると全体がファンタジーのような気もしてくる。

輔の父親役の平田満が純粋に暴力そのものだし、一瞬出てくる離島の灯台守役の足立正生さえも獣のようだ。女優になった女を演じる長谷川京子にも怪しさが一杯だ。彼女のマネージャー役の南果歩も実は恐ろしい。

これまでの大森作品と同じく、強烈な音楽と沈黙の対比もうまい。少し前に公開の白石和彌監督『彼女がその名を知らない鳥たち』と少し似ていて、出てくるどの人間も奥に野獣性を秘めている。『彼女が』の方がずっとリアルだが。

離島と言えば、撮影は『海辺の愛と死』と同じ槙賢治。しかし肉体の存在感を生々しく撮るこの映画とはだいぶ違う。

『光』といえば、今年は河瀬直美監督の同名の映画もあった。どちらも力作なので、年末のベストテンなどで混乱が起きないか、勝手な心配をしてしまう。

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