「運慶」と目が合う
11月26日まで東京国立博物館で開催中の「運慶」展を見た。これは今年最高の展覧会かもしれない。運慶やその弟子たちの仏像を見ているとそのまま立ち止まってしまい、「目が合う」感じだった。
一番心が震えたのは、興福寺の無著(むじゃく)菩薩立像と世親(せしん)菩薩立像。5世紀のインドの兄弟学僧というが、この圧倒的な精神性の高さは何だろうか。作られたのは鎌倉時代、1212年頃の作というから12世紀半ばに生まれた運慶は60歳くらい。亡くなる10年ほど前で、晩年の作になるだろう。
どちらも190センチを超すので観客は少しだけ上を見る感じだが、この大きさが抜群だ。人間のようで少し上にある存在に見える。兄の無著の方は何やら壺を持ち、ちょっと枯れた感じ。衣服の襞からも、老年の痩せた感じがわかる。澄み切った顔で遠くを見つめる。
弟の世親は両手に動きがある。そして顔はゆがみ、なにやら怒っているような悲しんでいるような何ともいえない表情をしている。その目の奥の悩みは尋常ではない。両方とも足が少し動いていて、静かな立像なのに、見る者に迫ってくる感じがある。
人間のすべて、人生のすべてが込められている気がして、その2つを10分くらい見ていた。興福寺でも公開は毎年期間限定で、前に行った時は見られなかった。ましてや今回は後ろまでぐるっと360度見られる。後ろから見てもありがたみは伝わってくるからすごい。
最初にパネルで解説があったが、当時の木造彫刻の目は、「玉眼」といって水晶を内側から嵌め込んで、色を付けていたらしい。「目が合う」感じはそこから来ているのかと納得した。中といえば、展示されている多くの仏像の中に「納入品」として、飾りや箱などが埋め込まれていることが、レントゲン撮影でわかったという。
あるいは高野山の童子立像も見もの。8体のうち6体が展示されているが、赤や黄色や青の服をまとった子供なのに、その怒りの表情は怖い。これまた人生のすべてを見せてくれる。6体の周りを巡っているとおかしくなりそうだ。
この方向だと、息子の康弁作の天燈鬼立像と龍燈鬼立像が完璧だ。天燈鬼は燈籠を左肩に乗せて睨み、龍燈鬼は龍を首に巻いて、頭上に燈籠を乗せてじっとしている。これも興福寺所蔵。
もちろん四天王立像のように戦う男を描いたものが鎌倉彫刻らしいのかもしれないが、今回はなぜかそうでない彫刻に妙に惹かれた。これはもう一度行った方がいいかもしれない。昼間は平日でも混んでいるというので、夜間開館に行ったが、それでも人は多い。そしてみんな本当に真剣に見ている。必見。
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コメント
運慶展を観た方にWEB小説「北円堂の秘密」をお薦めします。
少し難解ですが北円堂建立の歴史的背景が分かります。
グーグル検索すれば無料で読めます。
投稿: omachi | 2017年10月16日 (月) 18時13分